「ぜひ我が家に迎えたい」人と犬の出会い、運命ってあるのかな…怖がりな保護犬が初対面から警戒心見せず
日本最大の保護犬の譲渡活動を通じ、「殺処分ゼロ」の実現を目指しているピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。全国8ヶ所に同団体の譲渡センターがありますが、このうち東京のあきる野譲渡センターに、ある日、1件の問い合わせがありました。
里親募集中を告知していたマラサダというオスのワンコに対し、「1年ほど前に亡くなった先代犬に似ていて、気になるので面会させてほしい」というものでした。聞けば、その方の住まいはあきる野に簡単に来られる距離ではありません。スタッフは当初、オンラインでの面会を提案しましたが、その方は「すぐにでも会いに行きます」と言います。
■先代犬「サダハル」に、見た目も語感も似ていたマラサダ
マラサダは怖がりで慎重な性格で初対面の人には警戒してしまうワンコ。他のワンコとは相性次第で、人間に触れることもちょっと苦手です。ただし、オヤツが大好きで「安心できる」と判断した人間からは、すぐに食べることができるワンコでもありました。
果たしてマラサダは、連絡をくれた方との面会当日を迎えました。いつもなら特に初めての人には、やや警戒気味のマラサダでしたが、この方には警戒心があまりなさそうで、直接手からオヤツを食べたり、すぐに一緒にお散歩したり、撫でてもらうことができました。
スタッフは、この様子を見て「これはピッタリのマッチングかもしれない」と直感する一方、それまでのマラサダの様子と比べてみると、やや不思議にも映ったと言います。
また、この方が飼っていた先代犬の名は「サダハル」と言い、どことなく「マラサダ」とも語感が似ています。見た目だけでなく、この名にもなんとなく運命を感じて「すぐにでも会いに来たかった」とのことでした。
これらの面会を経て、この方は「ぜひ我が家に迎えたい、何度でも会いに行きます!」と強く希望しました。結果、譲渡に向け、お宅訪問や、迎えていただく際の事前準備などを進めていくことになりましたが、これだけトントン拍子に譲渡が進むことは同団体でも極めて稀なケースとのことでした。
■マラサダと里親さんに共通する不思議な偶然は、さらに……
マラサダはめでたく同団体を卒業することになったわけですが、譲渡に際しての手続きを進めるにあたっても次々と不思議な偶然が重なっていきました。
新しい里親さんが用意した首輪が、マラサダが使っていた物と全く同じだったり、マラサダの誕生日が里親さんの実のお母さんの誕生日と同じだったり、同団体にある棚が里親さんのご自宅の棚と同じ商品だったり……いくつもの偶然の一致が多く、里親さんもスタッフも、運命的なものを感じたと言います。
卒業の日、マラサダは先代犬「サダハル」さんと「マラサダ」から「サダ」を受け継いで、「新右衛門重定(しんえもんしげさだ)」という立派な名前になりました。
■成長したマラサダが遊びに来てくれることがとにかく楽しみ!
マラサダが卒業してから、約1ヶ月後、里親さんからスタッフの元に、嬉しい報告がありました。
「1ヶ月経ちますが、もう数ヶ月過ぎたんじゃないかと思うほど充実した毎日を送っています。クレートの中にいることが多いけれど、呼びかけると反応したり、オヤツに釣られて寄ってきたりと、少しずつ慣れてきたようです。散歩は尻尾を振って歩くようになり、嬉しくて田んぼのあぜ道を飛び跳ね走り回ることもあります」
里親さんは、マラサダ改め新右衛門重定のペースに合わせ、無理にスキンシップを取らないように気を使いながら、慎重に少しずつ距離を縮めるよう心がけているとのことでした。この他にも、里親さんからの愛情あふれる言葉が多く綴られており、スタッフは本当に良い方にお繋ぎすることができたと嬉しく思いました。
里親さんとスタッフの間の話では、いつかこのピースワンコ・ジャパン あきる野譲渡センターへ遊びに来てくれることになっています。スタッフ一同、第二の犬生で楽しく生活し、成長したマラサダ改め新右衛門重定の姿を見られる日がくることが、とにかく待ち遠しいとのことでした。
(まいどなニュース特約・松田 義人)