「前科はありますか?」「普通の格好を」 ワニガメ生態研究所長がテレビ出演断る真意「動物も人間も見た目で差別される」

「前科はありませんよね?」とADに聞かれ、ディレクターに聞かれ、最後はプロデューサーに確認される。ワニガメ生態研究所(@kanameogino)の荻野要所長がテレビ番組に出演した際の回想が話題を呼んでいます。

丸刈り頭にサングラスをかけた荻野所長はいかつい見た目からか、何度も逮捕歴を確認されたり、「普通の格好をしてください」と服装を変えるよう求められたこともあったといいます。「やらせみたいなことはしたくないし、カメを乱暴に扱う撮影クルーに疑問を感じたこともあった」と近年はテレビ取材をすべて断っているといいます。荻野所長に話を聞きました。

■どんな前科があると思っているのか

荻野所長は1995年からワニガメを飼い、生態の研究を始めました。飼えなくなって捨てられたカミツキガメやワニ、ヘビ、保護犬、保護猫も引き取るようになり、現在はワニガメ、カミツキガメや犬猫など約600体を保護、終生飼育しています。専門性の高いワニガメの飼育に精通する荻野所長はテレビ局の目に留まり、過去20数年で数多くのテレビ局の撮影に無償で協力してきました。一方で、逮捕歴を繰り返し尋ねられたり、カメ保護の理念に共感してもらえないなど、取材姿勢に疑問を感じることも増えていたといいます。

ーーそんなに何度も前科を尋ねられるものでしょうか?

「よくある話ですよ。打ち合わせの時に聞かれて、撮影後に聞かれて、最後はプロデューサーがお礼の電話をかけてきて、『それで…前科はないですよね?』と聞かれたりします。番組中で『前科はないと言ってください』と頼まれて、そう答えたこともあります。ひどいとも思いません。慣れっこになっているので」

ーー大変失礼ながら、荻野所長に前科はありますか?

「ありませんよ。テレビ局はどんな前科があることを望んでいるんだろう…。動物の密輸かな?傷害かな?」

ーー荻野所長に前科がないことは、テレビ局内で共有されていないのでしょうか?

「撮影のたびに制作会社が変わるから、取材のたびに聞いてきます。それに、テレビ局は制作会社に撮影を任せているから、制作会社から局のプロデューサーへの情報伝達もされていないんだと思います」

■芸能事務所は「タレントとのツーショットをアップしないで」

「前科の確認だけじゃなくて、タレントさんとツーショット写真を撮ると、そのタレントさんの芸能事務所のマネージャーから『ツーショットの写真はアップしないでください』と言われます。そもそもワニガメ生態研究所は動物が(噛みつく可能性がある)動物なんで、タレントさんが来るのを断っているんです。なのに、撮影クルーが私に黙ってタレントさんを帯同させ、『実は連れて来てまして…』とタレントさんのロケが行われることもあります。ワニガメやカミツキガメをタレントさんが見て、リアクションを取るシーンを撮りたいんでしょうね。それで有名な芸人さんや大手アイドル事務所のメンバーさんが来て、写真を撮っていかれても、『ツーショット写真は…』となります。宮迫博之さんの騒動以降、ますます厳しくなった印象ですね」

また、撮影に無償で協力しても、カメ保護の理念をなかなか理解してもらえないといいます。

「ロケに来たタレントさんに『ワニガメを捨てないでください』というメッセージを番組中で出してほしい、と撮影スタッフにお願いしても、かなったことがありません。池の水を抜く番組が、うちに取材に来たこともありました。『池の水を抜いても、カメを保護してくれるなら』と取材に協力しましたが、後日、『やっぱりカメは殺す』と連絡があり、そこで仲違いしてお蔵入りになりました。撮影時にカメをたたいて怒らせようとしたり、クルーのやり方にも疑問を感じました。それにね、カメだけじゃなくて、犬や猫も保護しているんですが、カメラが入ると、猫がめちゃくちゃおびえちゃうんです。動物のストレスになってしまうので、それでここ数年、テレビ取材は全部断っているんです」

■動物も人間も見た目で差別される

「ワニガメやカミツキガメも人間と同じで、見た目で差別されるんです。海外では絶滅危惧種になっているカメもいるのに、日本では殺していいことになっている。私は酒もタバコもギャンブルもやらない。クソ真面目に動物の保護活動しかしていませんが、アンチから叩かれたり、色んな目に遭ってきました。『見かけを直したら?』と言われることもありますが、私は十代からこの格好なんです。株式会社『鰐亀組』というのは私が営む建設会社のことです。建設業のもうけをほぼすべて動物保護に回しているんです。ヤクザの事務所じゃありません」

◇  ◇

カミツキガメやワニガメには鶏のもも肉や頭など冷凍したエサを与えていますが、一週間に100キロ食べます。最近、物価の高騰で1.5倍に値上がりして費用もかなりかかるといいます。黙々と水槽の掃除や水の入れ替えに励む荻野所長。ワニガメ生態研究所ではワニガメ・カミツキガメ保護募金を受け付けています。

(まいどなニュース・伊藤 大介)

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