スマホの操作ミスで出会った愛犬→飼う気はなかったが抱っこするとなぜか涙が…「今のあなたに必要です」

 神戸市生まれで大阪市在住のOL、こころさんがイングリッシュコッカースパニエルの「銀時」をパートナーに迎えて1年になる。そそっかしくて底抜けに明るい男の子。出会いはスマホ画面のクリックミスだったそうだが、いまではパグの先代犬「悟空」を失った悲しみを埋めてくれる存在に。そこに至るまで、実は様々なドラマがあった。

 イングリッシュコッカースパニエルは天真爛漫で人懐っこいタイプが多い。この「銀時」も根っからの天然で、場をなごましてくれる。飼い主は大阪市に住む会社員のこころさん。ソウルメートになって1年が経った。

 名前は彼女自身が人生の教科書にもしている人気アニメ「銀魂」の主人公、坂田銀時から。死んだ魚のような目も、天然パーマ具合も、銀色のブルーローンもイメージと重なった。

 「何より坂田銀時のように自分の信じた道を真っ直ぐ貫き、魂を曲げることを絶対に許さない、一本筋の通った男気あふれる、かっこいい侍になってほしいという願いを込めました」

 そこで、しつけの一環として在宅時には「銀魂」をテレビで流し続けているそうだが、当の本人は目もくれない。家の中でやんちゃするか、遊び疲れて寝ているか。しかも、寝る時は、こころさんの顔に覆いかぶさってくるそうだ。散歩に出かけると、愛想を振りまき、すれ違う人全員にあいさつ。公園では投げたボールを拾いに行っては、そのまま座り込んで、なぜかゴールキーパー役になってしまう。

 「銀時といると悩みごとや悲しい気持ちを忘れさせてくれます。それくらい、そそっかしいとも言えますが、彼なりの癒し方なんだと最近思うようになりました。なんも考えてなさそうで実は情に厚く、わざとおちゃらけ役を買って出ているのかも。私の小さな王子様です」

 そんな銀時との出会いは何とスマホ画面の操作ミス。しかし、こころさんは、飼い主としてはもはやベテランで、これまでに多くの出会いと別れを経験してきた。というのも、犬と生活をともにするのが家族の教育方針だったそうで、まだお母さんのお腹にいるときに同居していたのがメスの雑種犬チェリー。こちらは阪神淡路大震災の被災犬だった。

 「私にとって、チェリーは乳母のような存在。鼻に指を突っ込もうが、耳を引っ張ろうが絶対に怒らなかったんです。私のお昼寝の場所は決まってチェリーのお腹でした。イギリスに古くから伝わる犬のことわざ通り、赤ん坊の時は子供の良き守り手となり、幼い時は子供の良き遊び相手となり、少年期の時は子供の良き理解者。そして青年になった時、自らの死をもって子供に命の尊さを教えてくれました」

■新たに迎え入れたオスのパグ

 チェリーが亡くなって2年後。新たに迎え入れたのがオスのパグ「悟空」だった。こころさんと2人の弟さんが寂しそうにしているのを見かねた母が、たまたま新聞でパグの子犬の里親募集の記事を見つけて連絡したという。

 「譲渡費用は当時、国から支給された子ども手当をあてました。最初はブリーダーさんにお断りされましたが、母の、子ども達が出せるお金で、との言葉を理解していただけ、家族となりました」

 名前は引き取る前日にテレビでたまたま目にしたアニメ「ドラゴンボール」の「悟空」から。家族全員一致の命名だった。何より、こころさんにとっては11歳から15年間、多感な時期を過ごし、大学生、OLとなってからも一緒に暮らした最愛のパートナーでもあり、思い出は尽きない。

 「どんなおもちゃを買ってあげてもペットボトルのキャップでしか遊ばない。人が履いてる靴下が伸び伸びになるまで引っ張るし、畳む前の洗濯物の山から私の下着だけ掘り出して”こら!”としかられると、頭の上に下着を乗せて、フリーズしてたのを鮮明に覚えてます」

 その一方、悟空というだけあって、何かしら不思議なパワーを持っていたようで、彼が来てからというもの幼少から習っていた「武術太極拳」がメキメキ上達し、姉弟3人とも日本代表に選ばれる快挙。国際大会に何度も出場し、金メダルをはじめ、実家の玄関はメダルだらけになったそうだ。

 「とにかく、ひょうきんもので、ニッコニコの笑顔も、すねてる顔も、食べもんに夢中な様子も、だらしない昼寝姿も、シャッターに合わせたキメ顔も1000枚以上ある写真全部が全部宝物。悟空は飼い主バカではなく、本当にパグ界でも目鼻口のバランスが良く、イケメンでしたので、生まれ変わりやったらすぐに分かると思います。そして、悟空は無条件に私を愛してくれました。それが…。悟空ちゃんがいないだけで夏なのに、こんなに孤独で寒くて音のない世界だとは思いませんでした」

 そう。昨夏、神戸の実家に預けていた際、悟空は息を引き取ってしまったのだ。15歳。年齢的なものか、暑い日だったことから熱中症も考えられ、しばらくはショックで眠れない日々が続く。

 だが、喪失感を和らげてくれる出来事もあった。こころさんが弟さんにクリスマスにプレゼントしていたボーダーコリーの「ボノス」が状況を察し、こころさんのそばにずっといて、癒やしてくれたという。

 「寝る時は私の頭上で寝てました。ワンちゃんが人の枕元の上で寝る時は辛いこと、悲しいことを吸収する意味があるそうです」

 そんなある日、こころさんは何気なくスマホでワンちゃんをチェック。画面をのぞき、違う子の写真を拡大してみようとタップしたら犬の見学予約のページに入り込んでいた。それが銀時との出会い。そのとき、飼う気持ちは全くなかったそうだ。

 「気分転換に、と母にも背中を押され、岡山まで行きました。そこで、ちっちゃい垂れ目のチョコチョコ動き回る銀時を抱いた瞬間、なんて温かいのだろうと、涙が溢れ出たんです。その様子を見たブリーダーさんに今のあなたに必要です、と言われました」

 不思議な巡り合わせ。今では銀時との出会いは偶然のようで必然だったと思える。一方でチェリー、悟空に続いてボノスとの別れも経験した。悲しいかな、ボノスはその後、レプトスピラ症という感染症に罹患。見る見るうちに痩せ、今年3月に亡くなった。

 「予防接種もしっかりしてましたが、最後は本当に苦しそうでした。なのに、私が大阪から駆けつけると、懸命にしっぽを振ってくれて。ボノスはスペイン語で絆。名前通り、家族の絆を強くしてくれました」

 こころさんは最近改めて飼い主に向けた「犬の十戒」を読み直したそうだ。

 「銀時からのお願いと約束を一つも破ることなく、たくさん名前呼んで、たくさんお話しして、たまに喧嘩しても仲直りして、たくさんお出かけもして、私のところに来て、幸せやったと思ってくれるように、これからも一緒に生きて行きたいです」

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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