里親が見つかりづらい、高齢で病気の猫…保護猫団体が考案した、猫との新しい生活スタイルとは? 

まるで仙人のような風貌に優しい性格。大阪府高槻市にある保護猫団体「高槻ねこの会」で過ごすシャム爺の日課は、日向ぼっこです。一日中窓辺で過ごし、うつらうつら。それなのに、ひとたび喧嘩が起きると仲裁に入る漢気のある猫なんです。

「やれやれ、オレの出番だな」

なんて言っているかのように、定位置の窓辺から飛んでくる。まるで、気は優しくて力持ちという王道ヒーローのよう。

シャム爺は猫とも人間とも仲良くできるコミュ力の塊で、初めての人にもちゃんと挨拶をしてくれるんですよ。「高槻ねこの会」が運営するシェルター「ねこのおうち」のボス的存在です。長老という方が良いかな?

このシャム爺をお世話するスタッフは、彼に温かい家族と過ごしてもらいたいと考えています。でも、終生飼育は難しいだろうな…とも感じているのです。それは、シャム爺が高齢でエイズキャリアだから。しかも糖尿病があり、朝晩のインスリン注射が欠かせません。

手がかかり、医療費の負担が大きくなると予想される猫は、里親が現れにくいのが今までの常識でした。しかし、この現状を打破するために、「高槻ねこの会」は新しい猫との暮らしを提案しています。

それは「終生飼養預かり制度」です。所有権は「高槻ねこの会」のままで、普段の暮らしは新しい家族と。この形式を取ると、人間のライフスタイルが変わった際に、柔軟な対応が取りやすくなるのです。

医療費の面でも「終生飼養預かり制度」は話し合いが可能です。もう一人で悩まなくて済むのが良いですね。猫の方ものんびり家族と過ごせるので、シェルターにいる時よりも元気に過ごせるんですよ。

もっとお手軽に猫と過ごす制度もあります。それは「フォスターペアレント制度」です。これは家に猫を迎えられない人向けの制度で、保護猫への投げ銭といった感じでしょうか。毎月500円で保護猫の生活を支援します。もちろん「ねこのおうち」でふれあいも可能です。

このように様々な制度を用意している背景には保護猫活動をしている中で、猫を迎えたいけれど事情があるために迎えられない人がいると分かったからです。うちの子にしたくてもできない場合、どうすれば良いのか…。終生飼育しか選択肢がない場合、何かあった時に捨て猫が増えかねません。

特に、シャム爺のように人慣れし基礎疾患もある猫は、屋外で生きていくことはできないのです。虐待を受けたり、交通事故に遭ってしまうのが関の山。このようなことが起きると地域の環境が荒み、人間も暮らしにくくなってしまうでしょう。

猫と人間、双方利益がある方法を模索した結果が、「終生飼養預かり制度」であり「フォスターペアレント制度」です。もちろん、「高槻ねこの会」では正式譲渡も行っています。

自分のライフスタイルに合わせて、猫との過ごし方も選べる。これがこれからの保護猫活動で大切になってなってくるでしょう。要チェックです。

余談ですが、シャム爺のお気に入り撫でポイントは耳から頭にかけて。本当にうっとりしてくれるんです。「ねこのおうち」に遊びに行かれた際は、撫でてあげてくださいね。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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