「コロナ禍以前に戻ることは難しい」 日本居酒屋協会前会長に聞くアフター・コロナの居酒屋経営

コロナ禍で大打撃を受けている外食産業。特にお酒を扱う「居酒屋」は、客同士の飛沫が飛び交うなどの理由からさらに制限が厳しく、これまですでに閉店を余儀なくされた居酒屋も少なくないようです。

こういったウィズ・コロナ時代、あるいは、アフターコロナ時代、居酒屋はどのようにして生き延び、人々にサービスを提供すべきなのでしょうか。また、未来の居酒屋のスタイルはどうなっていくのでしょうか。今回は、コロナ禍とアフター・コロナにまつわる居酒屋の話を一般社団法人 居酒屋協会前会長の「駒八おやじ」こと八百坂仁さんに聞きました。

■昨年秋、売り上げを持ち返したものの、今年に入ってから再び半分以下に……

コロナ禍となり2年です。まず、この2年間で、居酒屋協会に参加している居酒屋を運営する方々、あるいは「酒蔵 駒八」でどういった影響があったかを聞きました。

「2020年の2月より、新型コロナウイルス感染拡大が始まったことで、大半の居酒屋では売上減少が続いており、今も変わらない状況です。『一店舗あたり6万円の補償』では追いつかないお店が多く、そういったお店の中には持ち出しが続き営業維持が困難になったところも多いです。

ただし、私が代表を務める『酒蔵 駒八』では2021年の事業規模に応じた給付金支給と合わせ、10月からのアルコール解禁によって売り上げが少し回復しました。コロナ禍以前の売り上げに対し、10月は75%、11月は85%、 12月は95%まで回復しました。しかし、今年に入ってから再びまん防によって、売り上げは再び半分以下に落ち込んでいます」(八百坂さん)

八百坂さんの言う、報道などで目にするものとも似た「コロナ禍以前に対するパーセンテージ」。大半が薄利で営業している居酒屋にとっては大打撃であることは容易に想像がつきます。加えて「感染拡大の温床になる」といった、ある種の悪者扱いも受けたことを考えると、居酒屋を愛する筆者としては、ちょっと黙っていられないところもあります。

「確かにコロナ禍が始まった最初の頃は、飲食店全体が悪者扱いされるようなきらいはありました。ただ、それもワクチン接種の広がりと合わせて、イメージは変わってきたように思います。

ここまでが『イメージ』の話ですが、緊急事態宣言によって出された『アルコール提供の禁止』といった、飲食店にとって死活問題はいまだに具体的に解決されていないのが現状です。政府や自治体に言いたいことは『現場をきちんと把握して、営業時間の設定などを行って欲しいということです。 例えば、『21時30分アルコールラスト・22時閉店』など。現在の『20時アルコールラスト』は、売り上げ向上には全く及ばないものです」(八百坂さん)

■アフター・コロナで、居酒屋に以前の100%以上のお客が戻ってくるのは難しい?

八百坂さんが指摘する制限緩和は、今後より一層の熟考によって改善されることを願うばかりですが、ただし、筆者が心配に思うのは、まだまだ出口の見えないコロナ禍で、どれだけの居酒屋が持ち堪えてくれるのかということです。アフター・コロナは、ある日を境に、急に「はい! 今日からアフター・コロナです! コロナ禍以前のように今日から自由にやりましょう!」ということにはなりません。おそらくは感染者の減少と合わせて、少しずつ戻っていくのだと思いますが、この「アフター・コロナの居酒屋」がどうなるかについても聞いてみました。

「コロナ禍で普及したテレワークなどの影響もあり、コロナ禍以前の100%以上のお客さまが居酒屋に戻ってくることは残念ながら難しいだろうと思っています。しかし、だからこそ居酒屋は今後『憩いの場』としての存在意義を高めていく必要があるおとも思っています。『すごもりでは得られないものとは何か』『安心してお仲間やご家族で足を運んでいただける店とは何か』を熟考し、より一層の努力をしていきたいと思っています」(八百坂さん)

また、八百坂さんは「居酒屋は、本来の姿に立ち返るべきだ」とも言っています。

「日本における『居酒屋』が、確固たる業態として認識されるようになったのは、まだ歴史が浅く50年強です。しかし、さらに昔から赤ちょうちん、焼鳥屋、小料理屋といったお店は家業レベルで行われてきており、日本にはなくてはならぬ業態だったと思います。

このコロナ禍での経験を機に、今後はチェーン店などの拡大路線一辺倒ではなく、原点に帰って『家業としての店舗継続』を基本にしていくべきだと思います。そのことがお客さまの心にもっとも通ずるもので、『日本人のコミュニケーションの場』として不可欠なものになっていくと考えています」(八百坂さん)

■政府・自治体の決定や発令は、少なくとも一週間以上10日程度前に言ってほしい

最後に八百坂さんから、政府や自治体に対する要望も聞きました。

「これは『酒蔵 駒八』、あるいは居酒屋協会としての要望ではなく、あくまでも私個人の希望と考えにすぎませんが、今日ワクチン接種も遅いながらも進んでいます。2023年以降は『年2回(=半年に1回)』のワクチン接種の法制化を定めていただきたいと思っています。また、これに基づいた自治体の決定や発令は、少なくとも一週間以上10日程度の時間的猶予をいただきたい。これは強く希望します」(八百坂さん)

八百坂さんのお話から「居酒屋」が抱えるリアルな事情と、しかしそれでも前進しようとする思いが強く伝わってきました。「居酒屋」は人と人とを繋いでくれ、癒しを与えてくれる場所。今の厳しい状況をどうか乗り越えていただき、多くの人々に「酒」と「豊かな時間」を提供し続けてくれることに期待するばかりです。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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