雨に濡れそぼって鳴いていた子猫 救出された子猫は心が沈んでいた“里親”を明るく笑顔にした
■雨に濡れそぼって鳴いていた子猫
モアナちゃん(生後2ヶ月・メス)は、今年9月9日雨の降る明け方、外で鳴いていた。
猫ボランティアのAさんは、猫の鳴き声が近くで響いているのに気づき目が覚めた。その時は寝ぼけ眼だったので、ぼんやり「あぁ、お世話してる地域猫の鳴き声だな」と思っていたものの、1時間ほどずっと断続的ではあるが鳴き止まない。よく聞いてみると、どうやら鳴き声が成猫のそれではなかった。
「あ!!!!もしや!」と思って窓から声のする方を見てみたが、姿が見えなかった。しかし、鳴き声は確かにそのあたりから聞こえてくる。「慌てて外に出て近辺を見回ると、母猫がうずくまっているではないですか!しかも、とっても狭いフェンスと壁の間に。はさまって出られないのかと思ったら、数メートル離れたところで小さな子猫が雨に打たれて、ずぶ濡れで丸まっていました」
Aさんは、急いで雨をしのぐために傘を持ってきて、猫の上を覆うようにフェンスに引っ掛け、捕獲の準備のためにその場を離れた。
「子猫が離乳するまで(十分成長するまで)、子猫の住処の廃材置き場の職員の皆さんと捕獲を見送って様子を見守っていたので、職員の方にもご協力いただき、フェンスを一旦解体して、捕獲を決行する承諾をしてもらいました。心配して猫をかわいがってくれていた職員の方も見守る中、無事に、茶白の子猫をまず保護し、続いて、母猫のお腹の下にいたもう1匹のキジトラ(モアナ)の子猫も保護しました」
■一瞬で心を奪われて
そのころ都内在住の細谷さんは、体調が悪く、長引く治療が辛くて突然涙があふれてしまうこともあるほどに追い込まれていた。
「今思えば本当に精神状態が普通ではなかったと思います。『あともう少し頑張ったら猫をお迎えしようか』と夫婦で話していました。夫の実家では猫を3匹飼っていて、猫と共に生活をしてきたので、いつかは飼いたいと思っていたようでした。でも、現実にはまだ先の話だと思ってい他のです」
そんな時、夫の知人を通じて保護猫の里親を探しているという話が舞い込んできた。細川さんは、「私はおそらく動物アレルギーだし、共働きだから飼うのは難しいのでは…?」と夫に言った。しかし、夫が「飼えない理由ばかり探さないで、そこに困ってる猫ちゃんがいるなら助けようよ!」と言ったので、会いにいくことにしたという。
夫妻は、9月中旬にAさん宅を訪問した。夫妻はモアナちゃんに会った瞬間に「一緒に暮らそう!」と心に決めたという。「部屋には3匹の子猫がいたのですが、モアナがすぐに私の膝の上に登ってきて、とても人懐こくて驚きました。小さくてあたたかくて、お顔も本当に可愛かったです。とても穏やかな子で、3匹いた子猫の中で私達と一番相性が良い気がしました」
モアナちゃんは、ごはんを食べるときも一歩引いて、兄弟の食べたあとに食べていた。Aさんの家から細谷さんの家までは車で1時間半ほどかかるので、子猫にはかなり負担かと心配したが、モアナちゃんがキャリーケースから出たがったので、車内に出して抱っこしてあげた。すぐに眠り始めて、ほとんど静かに眠っていた。家についてからは、ゆっくり歩きまわって匂いを確認していた。
「しばらくするとオモチャで遊んだり、活発な姿を見せてくれました。今では狩りモードの時は、すごいスピードで廊下を駆けずり回り、走りまわる音が聞こえるほど、元気いっぱいです」
■夜泣き対応も苦にならず
何か思い出のあるものの名前が良いねと、ハワイで結婚式を挙げた時に泊まったホテルが『モアナサーフライダー』だったので、モアナちゃんにした。「響きが気に入ったことと、モアナの意味は海、大洋でのびのびと育って欲しいと思いました」。モアナちゃんはすごく甘えん坊で、夫妻がご飯を食べていると膝にのせてほしいと見上げて鳴いて、登ってくると膝の上でくつろいだり、眠ったり共に食卓を囲んでいる。寝る時も、いつも夫妻にどこか触れながら眠るという。
オモチャで遊んだり窓の外を眺めたりするのが好きだ。「毎日のことですが、私達が帰宅するとすごく可愛い声で鳴きます。『ぴっぴー、きゃっきゃ』と鳴くのも珍しいし、可愛いです」
モアナちゃんを迎えて夫妻は気持ちが明るくなり、笑顔が増えたという。「最初のころは夜泣きがあり、何度か起きてミルクをあげる生活で、仕事中に睡魔に襲われることもありましたが、不思議と苦ではありませんでした。帰りが遅かった主人も急いで帰ってくるようになりました。私も帰り道は常に早足です」。会話の中心はいつもモアナちゃん。我が子のように愛おしい存在なんだという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)