過酷なラーメンスープ作りを救うか?折れない「スーパー耐久エンマ棒」爆誕 「木製だと年間6本折れることも」

ラーメン店には、店内でスープを作っていないところも多いことを知っていますか? スープ作りにはとにかく手間やコストがかかるため、スープ製造メーカーから買っている場合があるのです。工場で作るスープは常に味や品質が安定しています。ラーメン店主の求めている味を再現して作り出すことができ、さらにコストダウンにつながるとなれば、スープを店内で作らない店が増えているのは当然のことでしょう。チェーン店では自社工場でスープを一括で作っているところもあります。

そんな大変手間のかかるスープを店内で作っているこだわりの店もあり、そのスープ作りに欠かせないのが「エンマ棒」です。

エンマ棒は、お坊さんが座禅している修行者の肩を叩くときに使用する木製の棒「警策(きょうさく/けいさく)」にも似ていますが、スープ作りで使うエンマ棒は重いので叩いたら大変危険です(注意:人を叩いてはいけません)。

このエンマ棒は寸胴に入った豚骨や鶏ガラを砕いたり、熱々のスープをかき混ぜたりするなど過酷な使われ方をするため、木製のエンマ棒だと年間で6本も折れる店もあるそうです。スープ仕込み中に折れたら満足のいく味に作り上げるのは難しいでしょうし、折れるほどの力が加わるということは、ラーメン職人さんは体力も必要なのがわかります。

■製品の構造と材質をイチから見直し 開発に足掛け8~9年

2021年10月に東京ビッグサイトで開催されていた「外食ビジネスウィーク2021(第16回ラーメン産業店)」で、折れないエンマ棒「スーパー耐久エンマ棒」を発見。製造・販売を行っているハセガワ株式会社の担当者にどういう商品なのか聞いてみました。

--豚骨、鶏ガラを使っているラーメン店では、エンマ棒が年間6本も折れるのは本当ですか?

はい、エンマ棒は骨を砕いたり、潰したりするのでとても負荷がかかるため、木製のエンマ棒はポキっと折れます。スープはとても熱く、木製だと水分の吸収と乾燥を繰り返すことによって折れてしまうわけです。

--「スーパー耐久エンマ棒」は木製と比べてどういった特徴があるのでしょうか?

「スーパー耐久エンマ棒」の素材が、特殊ナイロン樹脂の削り出しで仕上げていて、水を吸わないためカビやササクレの心配もなく衛生的な製品です。調理時の耐熱温度は180℃と高温でも使用でき、従来品と比べても耐久性、耐摩耗性、耐熱温度が飛躍的に向上しました。また異物混入の防止対策として、本体カラーが食材として使うことがないブルーに仕上げています。

--エンマ棒を開発するにあたりどんな苦労がありましたか?

エンマ棒開発のきっかけは豚骨ラーメン店さんから、当社の樹脂素材のへら「ハイテクスパテラ」を購入して1カ月も経たずに壊れたと連絡が入ったことから始まりました。「ハイテクスパテラ」をラーメン店さんが使うのを想定していなかったこともありますが、豚骨、鶏ガラの骨系スープを作るには強度も耐久性もまったく足りていませんでした。

そこで先端を厚くした「ラーメンスープ仕込み専用」を開発しましたが、これも若干の耐久性アップにとどまり満足のいくものにはなりませんでした。さらに現在の原型となる「ハイテクスパテラ エンマ棒」を世に送り出しました。しかしこれでもなお耐久性の大幅な飛躍には至らず、製品の構造と材質をイチから見直してようやくこの「スーパー耐久エンマ棒」へたどり着くことができたのです。

初めに「ハイテクスパテラ」が壊れたと話を伺ってから足掛け8~9年程の歳月が掛かりました。

--けっこう大変な苦労をされているんですね。開発では実際に豚骨や鶏ガラスープを作っているのですか?

開発にあたっては自社で豚骨や鶏ガラスープを作ることはありませんが、何軒かのラーメン店さんやスープを作っているユーザー様にモニターをお願いしました。

--なるほど。ところでさっきから気になっていたエンマ棒という商品名はやはり閻魔様が持っているあの棒からですか?

一説によるとエンマ様が持っている棒「笏(しゃく/こつ)」に似ているからと言われているようですが定かではありません。

   ◇   ◇

「スーパー耐久エンマ棒」はスタンダードタイプとスリムタイムがあり、それぞれ長さが900mm、1200mmと調理器具としては大きく、スタンダードタイプ(1200mm)だと重さが1.8kgで価格4万2000円。価格は高いものの、折れないのであればイニシャルコストはかかるものの、ランニングコストは抑えられますね。それよりもまずはこのエンマ棒を使いこなせる体力も必要ですね。

(まいどなニュース特約・鈴木 博之)

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