文字サイズ

靴下3足1000円が招いたもの「一度失われた技術が復活することは困難」国内生産9割減、業界の苦悩と“意地”

安売りが当たり前になり苦境におちいってしまった靴下業界の現状がSNS上で大きな注目を集めている。

きっかけになったのは靴下メーカー・靴下販売店を兼ねるTabioのTwitter公式アカウントによる

「アパレルは高すぎる!という議論は定期的に起こるのですが、靴下産業はその結果3足1000円がデフォルトになり、国内工場は壊滅的となり、結果として全体の品質の低下を招いたので、弊社は現在のスタイルを継続したい所存です」

という投稿だ。

■3足1000円がデフォルト、国内工場は壊滅的に

たしかに年々、安売りが激しくなるアパレル製品の中でも靴下は特に安価に抑えられがち。国内の製造工場がもたないのも納得がいく。Tabioの投稿に対し、SNSユーザー達からは

「安いのばっかり買ってていつかいいの買おう!と思ってたら、いいのはほとんど売ってない、という事態になりがち。
ガラス食器とかもそうです。
いいの買おうと思ってデパートに行ったら、バカラしかない、みたいな(探せばあるのかもしれませんが)状態になってて呆然としたことあります。」

「少し高いなぁと思いながら靴下を購入した事があります。
ですが可愛くてお洒落で凄くお気に入りの1つになったので、これは穴が空いても縫ってはくぞ!と、かえって大切に長く使いたいと思う気持ちが湧きました
あとやっぱりモチがいいです!」

「誕生日に靴下屋さんのソックスを頂いて。
それまで4足1000円みたいなやつを穴が開いても履いてた足でしたが、もう元には戻れない…
なにこれ生地が気持ちいい…ってなってからは自分で買いに行ってます。
22.5センチなので、靴下屋さんのサイズ展開も嬉しい。
靴下屋なしでは困ります。」

「実家がかつて縫製工場だったんだけど、ミレニアムの頃廃業しちゃったんです。
国内のアパレルはこうやって壊滅していった、その現場を見ちゃったんですよねー。」

「靴下やアパレルだけではなく、ありとあらゆる産業についても当てはまることではないでしょうか。
続くスレッドの「一度失われた技術が復活することは困難」がグサリと刺さります。」

など数々のコメントが寄せられている。

■国内の業者は4分の1、生産量は10分の1に

TabioのTwitter担当者にお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):単価が安く抑えられてしまったことによる靴下業界の苦境についてお聞かせください。

担当者:パンティストッキング類も含む靴下生産業界全体で、ここ30年ほどの間に、業者数ではぼぼ1/4、国内生産量ではほぼ1/10まで規模が落ち込みました。ソックス類だけを見ると、国内市場で販売されている全数量に占める国産品の割合は、1990年には85%強あったものが、2020年にはほぼ10%まで低下しています。これに伴って、靴下生産に付随する各業種の業者の間でも淘汰が進んでいます。

低価格帯品の市場占有率が増え、このゾーンでの競合が激しくなったことで出荷価格が低下し、国内生産では採算が合いにくくなりました。また、仕入れ先がより供給コストの安い海外に生産スペースを移すなどしたことで、国内工場は事業展開の基盤を奪われてきました。こうした結果、国内工場の転廃業が進みました。

中将:業界はそこまで深刻な状況にあるのですね。御社の現在のご方針についてお聞かせください。

担当者:弊社は、日本の靴下業界の永続を目的に掲げ、全国で『靴下屋』『Tabio』『Tabio MEN』といった靴下専門店チェーンを展開している靴下専業企業です。企業方針として「不易流行」を掲げ、「流行」の部分として、市場環境やファッションのトレンドなどといった様々な変化に対応するのとともに、「不易」の部分として品質を守り続けています。

■低価格商品も必要、でも「履いた瞬間、つい笑みを浮かべてしまう履き心地」を

中将:上質な靴下の魅力についてお聞かせください。

担当者:履いた瞬間、つい笑みを浮かべてしまうような履き心地や、靴下がコーディネートの主役にもなれる品格、デザイン性を体験していただけます。

中将:今回のご投稿に対し、一部SNSユーザーから「靴下屋でも3足1000円の靴下を売っている」という指摘がありました。

担当者:「靴下屋」では、1984年の展開当初から取り扱いがあります。ただ当時から、中心に据えているのは1足売りの商品です。現在「3足1100円」については、ファミリーが多く訪れる店舗などで展開していますが、都心部のファッション性の高い店舗では1足売り中心の展開にするなど、店舗特性や立地によって差別化を図っています。またテイストも差別化が図れるようにMDデザイナーが調整を行っております。なお1足売りの商品では、付加価値を高めるための懇切丁寧なものづくりをしなければならないと考えています。(※「Tabio」「TabioMEN」業態では「3足1100円」の取り扱いは無し)

中将:これまでのSNSの反響へのご感想をお聞かせください。

担当者:弊社会長、及び弊社が今まで様々なメディアで発信していた情報だったので、正直ここまで反響があることは驚きでした。

ただ、一部誤解を招いてしまっているのが、低価格化が悪だと言う主張と捉えられてしまったことです。低価格化は企業にとって戦略・戦法として重要であり、顧客の満足につながるのであれば、それは企業の使命として間違っておりません。しかし同時に、低価格のゾーンが当たり前となり、価格競争による消耗戦によって、これまでに積み重ねられてきた技術や品質が損なわれていくのであれば、お客様の選択肢が失われ、お客様の利益を損なうと感じています。今回のツイートは、そうした中で、弊社としてその選択肢を担保し続けることを使命とするという意思表明でありました。

◇ ◇

「安く買いたい」という購買者の要求は時に産業に対し不可逆的なダメージを与えてしまう。その結果、商品の品質低下やレパートリーの減少などしっぺ返しをくらうのは購買者自身。産業を守り豊かな社会を保つという視点からも、良いものは適正価格で買うという心がけを大切にしたいものだ。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

関連ニュース

    ライフ最新ニュース

    もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス