自動車教習所で指導員7年目のSさん…ズバリ年収は? 1~3月は繁忙期「休日が週1日になることも」

自動車の運転免許を取得しようとする人の大半が通う自動車教習所。学科や運転技能を教えるのは「教官」と呼ばれる教習指導員だ。厳しくて怖いイメージは、もはや過去のものだという。

■自分を活かし人のためになる仕事を志してIT関係から転職

沖縄県にある自動車教習所に勤めるSさんは、指導員歴7年の若手指導員だ。一般的に「教官」とか「指導員」と呼ばれているが「教習指導員」が正式な呼び方だそうだ。Sさんは教習指導員と検定員の資格を有している。

「略して指導員といいますが、教習生からは教官と呼ばれることが多いです」

指導員は、どんな車でも教えることができるのだろうか? 1種免許だけでも「普通」「準中型」「中型」「大型」「大型特殊」「牽引」「普通二輪」「大型二輪」「原付」「小型特殊」があり、普通免許には「AT限定」まである。しかも車輛ごとに操縦特性が異なるから、1人の指導員がオールラウンドに教えるのは難しそうだが。

「指導員の資格には、運転免許証とは別に教習指導員資格者証というものがあります。これは免許制度とは違って上位資格的なものはなく、大型自動車の指導員資格があったとしても中型自動車の教習はできないのです。車輛の操縦特性の違いも理解しなくてはいけないため、それぞれの資格ごとに運転技能の能力が求められます」

Sさんは16歳で普通自動二輪、18歳で普通免許、24歳で中型免許、28歳で大型自動二輪免許を取得した。はじめから指導員をめざしてこれだけの免許を取得したのかと思いきや、そうではないらしい。

「指導員になる前はIT関係の仕事をやっていましたが、思うところあって退職しました。自分を活かせて人の為になる仕事がしたいと思い、求人募集で見つけた指導員の仕事に面白みを感じて、教習指導員見習いとして就職しました」

その後、指導員と検定員の国家試験にも合格して、現在に至るというわけだ。

「本気で勉強したら、資格は1年ほどで取れると思います」

■気になる、指導員の勤務時間とお給料

Sさんが勤める教習所の指導員は、40代以上が圧倒的に多く、20代は1割くらいだという。女性の指導員もいるが、やはり9割は男性だそうだ。

勤務は基本的に8時間で、残業が1時間ある。休憩時間も挟むので、10時に仕事を開始して20時に退社するというパターンだ。

「仕事は10時からですが、担当する車輛の点検をしなければいけないので、出勤は9時20分頃です」

休日は日曜日と他日の週2日だが、1~3月は高校生が大量に入所してくる繁忙期にあたるため、残業が増えたり休日が週に1日になったりするらしい。

ところで、自動車教習所といえば、怖い指導員がいて厳しく指導されるイメージをもつ人が多くないだろうか。実際はどうなのだろう。

「業界的に、褒める教習にシフトしていっていると思います。その理由として、教習へのモチベーション向上、円滑に教習を進める雰囲気づくりといった教習効果の向上のほか、集客やクレーム対策などサービス業としての事情もあります」

ガチガチに緊張している教習生が少なくないので、Sさんも基本的にはそのように務めているという。

「ですが褒めることが最終目的ではないので、褒めを手段にして教習生に上手に運転する方法や、安全な運転を自分で考えさせる教習を意識しています」

■ズバリ指導員のお給料は?

気になるのが指導員のお給料だが。

「年収で300万ちょっとです。ボーナスも雀の涙。沖縄県の給与水準が高くないという事情もありますが、業界の中でも低めかもしれません」

新しく資格を取得すると、資格手当としてプラスアルファがつくそうだ。

指導員をやっていて「やりがい」を感じるのは、どんなときだろう。

「上手にできなかった生徒が、できるようになっていくのを手伝えたときです。生徒の顔が本当に良い表情になるんです」

逆に苦労を感じるのは、とくに繁忙期の拘束時間が長くなること。朝から晩まで仕事だけの毎日になってしまい、それを嫌って辞めてしまう職員もいるそうだ。

■ドローンの教習をやっている自動車教習所もある

指導員の立場から、教習所を選ぶポイントを聞いてみた。

「立地、料金面、休校日、送迎の有無、建物のきれいさなどを総合的に判断して、自分に合う教習所を選ぶといいでしょう。ネットで検索すると、地域の教習所を紹介する比較サイトがあると思います」

教習所へ通う際に、いちばん気になるのが指導員との相性だが。

「たいていの教習所では、怖いと感じたり人として合わないと思ったりしたら、指導員の拒否設定ができるはずですから相談してみてください」

Sさんは、これからの「教習所像」についても語ってくれた。

「指定教習所の卒業生を全国レベルでみると、平成元年には250万人いました。令和元年は150万人に減っています。一方で教習所の数は1468から1258に減りました。卒業生の減り方からみて教習所の減り方が緩やかなのは、高齢者講習が始まったからだと思われます」

あくまで統計上の数字なので、業界全体の勢いが弱くなっているわけではないともいう。制作会社と共同で学科コンテンツをつくったり、教習生用の娯楽施設をつくったり、あるいはドローンの教習を始めた教習所もあるという。また指導方法でも、上手くできたところを拾い上げてほめちぎることで満足度を上げるなど、それぞれに企業努力が為されているようだ。

「今後、確実に直面する大きな課題は、自動運転です。現状維持では衰退しますから、各教習所の底力が試される時代になると思います」

Sさんが個人的に取り組んでいるのは、運転技能や学科を分かりやすく解説する動画「現役教官ちゃんねる」のYouTube配信だ。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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