コロナ禍の打撃受け…銀座で寅さんファンに愛された佐藤蛾次郎の店「蛾次ママ」が大みそか閉店

 コロナ禍によって店を閉める飲食店が相次ぐ中、映画「男はつらいよ」シリーズなどで知られる俳優・佐藤蛾次郎が四半世紀近くに渡って営んできた東京・銀座8丁目の「Pabu 蛾次ママ」が今月31日で閉店する。夜10時までの時短営業を続ける師走の夜、感染対策を徹底しながら、店を切り盛りする長男で俳優の佐藤亮太と蛾次郎に思いを聞いた。

 JR新橋駅や地下鉄銀座駅から徒歩5分ほど、博品館劇場の向かいにあるビル9階で元女優の妻・和子さんと共に「蛾次ママ」をオープンして「今年で25年目」となる。約30席で、基本料金は1時間3500円と銀座では安価な設定。何より、名わき役として芸能界に幅広い交友関係を築いてきた佐藤から「ここだけの話」や「取って置きのエピソード」を聞ける店として映画ファンに愛されてきた。

 だが、緊急事態宣言を受け、今年4月から3か月間休業。亮太は当サイトの取材に「休業中も家賃は払い、7月7日から再開しましたが、月末までにお客様は10人。8月に少し増えて25から30人くらいの間。9月に40~50人くらいで、10月が60人くらいまでになりましたが、11月にまた感染者が増えたこともあって、20人くらいに減ってしまった。都にお金は申請していただきましたけど、銀座ということを考えたら、家賃にもならないですから。営業面でも疲弊してしまいました」と証言する。

 そして、苦渋の選択として11月下旬にブログで閉店の告知をした。亮太は「店を閉めるからと言って、この状況ですから来てくださいとは言えませんし…」。12月に入っても客がゼロという日もあったが、最後の日へのカウントダウンとなるにつれ、口コミで閉店情報が広がり、駆け込み客が今月半ばを過ぎてから徐々に増えて来た。蛾次郎は接客しながら「なるようになるさ。後は野となれ山となれ」と前向きにふるまう。

 蛾次郎が副業として飲食店を始めたのは「ママと結婚して、息子が生まれる前のこと」。亮太は73年生まれなので、半世紀近くになる。

 新橋のスナック「撫子(なでしこ)」ではテレビ朝日系ドラマ「浮浪雲」(1978年)で共演した渡哲也さん、桃井かおり、公私ともに付き合いの深かった盟友の松田優作さんと原田芳雄さんも訪れ、この4人を交えて夜通し歌う「撫子ライブ」という宴(うたげ)も開催していた。同店にはオノ・ヨーコの弟さんが常連だった縁で、ジョン・レノンとヨーコが1度だけ来店したこともあったが、たまたま店を閉めていて入れなかったというエピソードもある。

 その後、銀座7丁目のパブスナック「ポポ」を経て、「蛾次ママ」をオープン。蛾次郎は「数年前、20歳くらいの女の子が店に電話をかけて1人で来てくれて、俺の顔を見ると、泣き出したんですよ。『どうしたん?』って聞いたら、『本物の源ちゃんがいる…』って。若いのに『男はつらいよ』にはまったらしくて、うれしかったね。その子だけやなく、『ほんとにいるんだ』と言われる方もいます」。柴又題経寺の寺男・源公として69年の第1作からレギュラー出演した蛾次郎は後追い世代にも慕われた。

 「蛾次ママ」の名物は渥美清さんも愛した蛾次郎オリジナルの「寅さんカレー」(税別1000円)。焼酎に浸けた高麗人参、タツノオトシゴ、クコの実、ウコンなどの薬膳エキスを入れて寸胴鍋で煮込み、2~3か月ほど冷凍庫で熟成させた逸品だ。このカレーを食べたくて遠方から訪れる人も多い。

 閉店で食べられなくなることを思い、記者は「レトルトカレーにして通販は?」と僭越ながら提案したが、蛾次郎は「その話は昔あったけど断った。この店で食べるからいいんですよ」。亮太は「寅さん関連のイベントなどで作らせていただく可能性はあるかもしれません」と示唆した。

 43年間連れ添った愛妻の和子さんが多発性骨髄腫のため68歳で亡くなって4年。父と子で店を守ってきたが、20年の大みそかで幕を閉じる。この時代、場所を変えたとしても、新たに店をやることは厳しい。共に俳優業に専念するつもりだ。蛾次郎は今年公開された映画「罪の声」に出演。「大阪のお好み焼き屋の大将の役です。主役の小栗旬さんと絡ませてもらいました」。76歳、店を閉め、生涯一役者に徹する。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)

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