油をかけられ、火のついたタバコを投げつけられて…過酷なノラ生活から救出され幸せな“家猫”になったまるちゃん

『油をかけられ、火のついたタバコを投げつけられていた白血病キャリアの猫さん』

 衝撃的な文字が並んでいます。これは関西圏を中心に活動するノラ猫・保護猫専門のお手伝い屋さん『ねこから目線。』の2019年3月15日付のブログのタイトル。実際、こういう猫がいたのです。

 京都市内のあるコンビニ近くに1匹のノラ猫が暮らしていました。近所の住人やコンビニのお客さんからかわいがられていたそうですが、世の中にはノラ猫の存在を疎ましく思う人もいます。ある日、その猫は油のようなものをかけられ、火のついたタバコを投げつけられました。明らかな虐待です。それ以前にも薬品のようなものを浴びせられ体の毛がごっそり抜け落ちたことがありました。多くの人が胸を痛めましたが、保護には至らず。ただ、タバコ事件の日は目撃した人が保護して警察に届け、病院へも連れて行ってくれました。検査をして分かったのは、猫白血病ウイルス陽性ということでした。

 ニャーちゃんと名付けられた推定2~3歳のその猫は、保護主さんの家でしばらく暮らしました。避妊手術のため病院へ行くと、酷い歯肉炎と大量のハジラミの寄生が判明。ごはんをもらっていたとはいえ、ノラ生活で体が弱っていたのでしょう。手術は無事に終わり口の中を消毒、毛の根元に付いたハジラミの卵をしっかり落とすため下半身を丸刈りにして保護主さんの家に戻りました。

 さて、ニャーちゃんをどうするか。保護主さんの家には10歳になる先住猫がいました。白血病キャリアであるニャーちゃんと先住猫が接触しないよう隔離して飼い続けることも、高齢の先住猫にワクチンを打ち続けることも現実的ではありません。さらに、保護主さんには生後10か月の赤ちゃんもいました。育児だけでも大変な時期。そこで『ねこから目線。』に里親募集のお手伝いを依頼し、冒頭のショッキングなタイトルのブログが配信されたのです。

 多くの人が記事をシェアしてくれ、4日間で6000人を超える閲覧がありました。中には面会を希望してくれる人も! 神戸市に住む谷口貴美子さんは推定4歳の猫・すみれちゃんを飼っていて2匹目は考えていませんでしたが、記事を読んで居ても立っても居られず面会を申し込んだそうです。

「この子を助けるために何か役に立てるならと思って会いに行きました。里親になろうと決めていたわけではありませんが、保護主さんから改めて保護したときのお話を聞いて、うちに来てほしいと思ったんです」(谷口さん)

 その日からトライアルがスタート。通常、トライアル期間は2週間~1か月程度ですが、ニャーちゃんの場合はお世話に少し手が掛かること、すみれちゃんとの相性も見なければならないことから長めの2か月が設定されました。

 結果的にすべてクリアして今は谷口まるちゃんとして幸せに暮らしているのですが、他の猫に比べてケアが必要なのは変わらないようです。と言うのも、口内環境の悪さから、まるちゃんは絶えずヨダレが出ているのだとか。

「その状態でごはんを食べると口の周りに食べかすがつきやすいんです。自分で体を舐めるからその部分がまた汚れるし…おなかが剥げてきたこともありました。だから、できるだけきれいに拭いてあげて、休みの日は朝晩ブラッシングするようにしています。人間の子供用の歯ブラシがいいんですよ。当たりがやわらかいし、アゴの下とか細かいところにも届くので」(谷口さん)

 歯肉炎のため硬いものを食べると歯茎から血が出ることもあるそうで、カリカリフードをふやかしたり、シニア用のフードをあげたり。「免疫力の弱い子だから、傷ができるとバイ菌が入りやすい。口内環境には特に注意しています」(谷口さん)。家に来てから何本か歯が抜けてしまいましたが、それでもヨダレの量は減り、口臭も軽減されてきたと言います。

 まるちゃんは谷口さんのマッサージもお気に入りで、トライアル中に初めてのどを鳴らしてくれたのもマッサージ中でした。ニャーちゃんの時代、保護主さんは“ゴロゴロ”を聞けなかったそうで、谷口さんに心を開いていることが分かるこのエピソードも、正式譲渡につながったに違いありません。

 現時点で白血病は発症しておらず、すみれちゃんとの同居についても、複数の獣医師から「(すみれちゃんに)ワクチンを打っていれば大丈夫」と言われています。最初は警戒心のあった2匹ですが威嚇することはなく、今では並んで寝たり、すみれちゃんがまるちゃんの体を舐めてあげることもあるそうです。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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