「みかんはOK、バナナはアウト」謎だらけの公職選挙法 「時代に合ったルールを」元市会議員が提言

■ウグイス嬢の日当が法定額でやれないワケ

6月18日、河井克行前法相、案里参院議員が公職選挙法違反容疑で逮捕された。逮捕劇の発端は、19年の参院選挙でウグイス嬢に対し決められた日当以上の支払いをした件だ。そもそも、彼らはなぜ法で決められた額以上の支払いをしてしまったのだろうか。

そこには、時代錯誤の公職選挙法の存在がある。

選挙カーの華、ウグイス嬢への日当は15000円までと決められているが、実はほとんどの陣営で守られていない。それもそのはず、大体プロのウグイスは、普段2時間5-10万円の司会業を本業にしている方が多く、一日15000円ではそもそも雇えないケースが多い。半日交代ならまだしも、一日フルに乗車するともなると朝8時から夜の8時の12時間拘束、雨の日や雪の日も窓を開けて手を振り、マイクを握り続けるというかなりの重労働となる。それでいて12時間で15000円は現実的ではない。その結果、彼女らを雇用するためには日当とは別に企画料などと形を変えたり、後日別名目で支払ったりしている。特に国政選挙や統一地方選の時期は、各陣営ウグイス嬢確保のためウグイス争奪戦となり、当然好条件を引き出すため日当を超えた額を支払うのは業界の常識となっている。公職選挙法が時代に合っていないのだ。

■停車中の連呼はOK、走行中はNG 謎だらけの公職選挙法

公職選挙法のとんでも事例には事欠かない。

私が政治の世界に飛び込んだのはかれこれ20年以上前になるが、当時先輩から教えられたのは、「選挙事務所では、お茶うけとして煎餅を出すように」ということだ。意味が分からず、「チョコレートでいいじゃないですか」というと、「馬鹿もん!チョコは選挙違反だ!」と怒られたのを覚えている。公職選挙法第139条に規定される「何人も、選挙運動に関し、飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供することができない」という項目に触れるという。

公職選挙法が出来たのは戦後ほどない昭和25年のこと、みかんはいいが、チョコやコーヒー、バナナ等の類は全て舶来品の高級品であり、通常用いられる程度の菓子の範囲を超えているということらしい。そんな謎ルールが未だに生きており、私が選挙に出ていた際、スタッフが警察に声を掛けられ、「事務所でコーヒー飲んでないか?」などとド真剣に聞かれていた。

他にも、選挙事務所や自動車に取り付けていいのは、看板、立て札、ちょうちんとなっているが、今どき名前入りの提灯をぶら下げる者などいない。ましてや自動車につけていいということになっているが、これはリヤカーを想定したものだ。

また、驚くなかれ選挙カーでの連呼行為は禁止、ただし停車中はOKという謎ルールになっている。停車中こそ連呼されれば不愉快極まりないと思うのだが。ついでに言うとみんなやっている戸別訪問も禁止事項だ。

当然、公職選挙法もネット選挙に対応するルールなどの改定が随時行われてきているのだが、不思議なことにこうした時代錯誤の謎ルールは放置されたままになっている。これを機に時代に合ったルールに変えればいいと思うのだが。

◆村山 祥栄(むらやま・しょうえい)前京都市会議員、大正大学客員教授。1978年京都市生まれ。専修大学在学中は松沢成文氏の秘書を務める。リクルートを経て京都市議に(現在5期目)。2010年、京都党を発足。2020年2月の京都市長選で出馬も惜敗。現在は大正大学客員教授。

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