望まぬ妊娠相談1年半で3千件超…神戸の「いのちのドア」未受診妊婦も48件、蘇生必要な赤ちゃんも

 望まぬ妊娠や家庭や経済的事情などで子どもが育てられないと悩む女性のために、2018年9月に開設された相談窓口「小さないのちのドア」(神戸市北区)に寄せられた相談が、今年3月末までの1年半余りで3000件以上に上ることが分かった。うち48人は感染症や胎児の発育状況などのリスクが高く、高次医療機関での出産が必要な「未受診妊婦」だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済縮小で困窮する妊婦や未受診妊婦、生後まもない赤ちゃんの遺棄事案等の増加も懸念される中、窓口を運営する一般社団法人「小さないのちのドア」は居場所のない妊産婦のための「マタニティーホーム」の建設も計画している。

 窓口は「マナ助産院」(永原郁子院長)に併設する形で開設。助産師が24時間365日、訪問や電話、メール、LINE等で相談を受ける。相談はすべて無償で、健康保険証がなくても利用できる。

 「未受診妊婦の中には、家庭の事情や経済的な問題を抱え、誰にも頼れず、支援もすり抜け、そうこうするうち陣痛が始まって…という人も多い」と永原郁子院長。寮付きの職場だったが妊娠で働けなくなって住む場所を失い、健康保険証も失効している母親や、精神的に追い詰められ自傷行為に走る母親、虐待を受けた経験のある女性も。また、定期的な妊婦健診を受けていないため胎児の状況が確認できず、搬送先で産まれた赤ちゃんも蘇生が必要なことが多く、NICUで命を取り留めた赤ちゃんもいたという。

 相談は全国から寄せられ、現地での対応を依頼することも。今年13月にも既に3人が救急搬送され出産した。厚生労働省の調査では2017年度に心中以外の虐待で死亡した子どもは0歳児が28人で半数を占め、中でも生後0カ月は14人に上る。「でももし、そうなる前に身を寄せられる場所があったなら」と永原院長。今回建設を計画するマタニティーホームでは、お腹が目立ち始め、働くことが難しくなる妊娠78か月ごろから産後12か月ごろまでの母親を念頭に、5人ほどを受け入れ、助産師のほかソーシャルワーカーらとも連携して出産を迎えてもらうという。

 また「未受診で産まれた48人のうち23人は特別養子縁組が決まりましたが、出産前に手続きができればお母さんもより安心して産め、スムーズに養親さんの元で育てることができる」といい、「『産めない=中絶』『育てられない=遺棄』でなく『産んで託す』ができれば、悲しい事件も、中絶で苦しみ続ける女性も減るのでは」と永原院長。現在賛同者も募っており「家族に、パートナーに、社会にも拒絶され続け、深く傷ついた女性に、何千人何万人の人が思いを寄せてくれる、世の中は温かい、信頼できるというメッセージになったらいいな、と思うんです」と話す。

(まいどなニュース・広畑 千春)

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