コインランドリーで充電→電気窃盗で逮捕…カフェでこっそり充電したら罪に? 元アイドル平松弁護士が解説

 昨年12月、兵庫県養父市のコインランドリーで、勝手にパソコンに充電した男性が逮捕された。罪名は「電気窃盗」。あまり聞き慣れない言葉だが、カフェなどでこっそり携帯電話に充電した経験がある人は少なくないのでは。店側にバレてしまったら通報されるのか。かつて歌手デビューを果たした元アイドルの平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。

 Q 電気窃盗という犯罪を初めて聞きましたが、どのようなものですか?

 A 電気窃盗は、盗む対象が目に見えない無体物であるという違いがあるだけで、いわゆる窃盗罪と同様です。刑法235条は窃盗罪について「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」としているのですが、後続の刑法245条に「電気は、財物とみなす。」とも規定してます。このため、電気も物を盗むのと同じように窃盗として扱われるのです。

 Q カフェやジムで店側の了解を得ずに携帯などを充電したら罪になるということですか?

 A そうですね。「充電用」としてご自由にお使いくださいなどの案内もないのに、店や建物のコンセントを無断で使うことは、この電気窃盗罪に該当し得ます。ただ、実際に逮捕勾留にまで至るケースは多くはありません。

 Q 実際に立件されたのはどんなケースですか?

 A 2010年に、電気料金の滞納で電気を止められた男性が、アパートの共用コンセントから電気を引いて、自分の部屋で日常的にテレビを見ていたという事件で、大阪地裁は男性に懲役1年(執行猶予3年)の刑を言い渡しました。この事案の被害額は「2円50銭相当」です。立件は、金額のみならず、行為の悪質さ、態様等も考慮するということでしょうね。

 Q この電気窃盗という犯罪を知らなかった人も多いと思うのですが。

 A たしかにそうかもしれませんね。しかし、「法の不知は宥恕しない。」という法格言があります。法律を知らなかったという言い逃れは許さないという意味なのですが、実際刑法38条3項にも「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」と規定しています。現代人は、スマートフォンやモバイルWi-Fiルーター等の普及によって利便を享受している以上、知っておかなければいけないことも増えます。いまや、カフェや空港等で当たり前のように充電コーナーが設置されているからこそ、今いちど、「ここでの充電は本当に大丈夫なのか」というように慎重になるべきですね。

◆平松 まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。2010年に名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

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