地域の防災訓練には出たほうがいい理由 体験して初めて身につく「防災リテラシー」がある

福祉の仕事をしていますが、防災や災害時にも福祉の視点が重要との認識がじわじわと広まっているようで、地域の防災訓練に参加させていただく機会も増えてきました。正直なところ、これまであまり防災訓練には興味がなかったのですが、参加してみてわかることがあります。一番大きな声で言いたいことは「地域の防災訓練や、防災イベントがあるのなら、出来る限り参加したほうがいい!」ということです。

私はこれまで参加した防災訓練で、「避難所に応援に行った時の受付の模擬練習」や「段ボール箱で椅子をつくる練習」や、「段ボールベッドの組み立て練習」、「車椅子に乗っている人を人力で階段移動する練習」など、いろんな練習を見たり手伝ったりしました。そして、先日、初めて「煙の体験」をしてみました。

煙発生装置の繋がったテント式の小屋は、入り口を開けた瞬間にモアモアモア~と真っ白の煙で視界が遮られます。テント内部が黄色かったため、まだなんとか前の人の姿が見えましたが、それでも走って逃げるには難しい見え具合でした。知り合いと一緒に参加していたので、私の顔は笑っていましたが、心の中では「怖い…こんなの、想像してなかった」と恐怖と驚きでいっぱいでした。

近頃の日常生活の中で煙を体験することはあまりありませんから、想像することは難しいです。「煙があっても、ある程度みえるに違いない」と思っていると大きな間違いです。さらに、煙体験で発生している煙は、やや甘い香りのする吸い込んでも大丈夫な煙ですが、係員の説明によると火災の際に発生する一酸化炭素を含んだ煙では数回吸い込むと動けなくなるのだとか。暗い建物の中で、火災が発生したら、そう簡単には逃げられないことがわかります。

火災は震災でも発生しますが、津波や洪水で流された車のガソリンやガスボンベに火花などで着火し、燃え広がることもあるのだとか。水がふんだんにある状況でも、油断はできません。

日本列島は、近年は特に台風や長雨を原因とする水害や、地震と津波、火山噴火など、さまざまな災害に見舞われています。そして今後も、南海トラフ大地震の発生など、大きな災害が起こるリスクを、ニュースなどを通じて頻繁に耳にします。また、自然災害だけでなく、事故や事件が思わぬ大きな被害を出すこともあります。

災害発生時、自分の身はできる限り自分で守る、というのは大切なことです。それを自覚することが大事なのですが、同時に、知って備えることがより一層大切です。「防災リテラシー」という言葉があります。リテラシーとは情報を捉えて適切な行動を選択し実行できる力のことで、防災リテラシーとは災害に際して適切な行動をとれる力です。そのためには、まず「知る」と言うことが大切です。

防災訓練は「知る」ための大切な機会です。

最近の防災訓練では、昔からよく行われている消火器での消火練習以外にも、さまざまな体験ができる設備があります。人工呼吸や心臓マッサージを経験できる人形、地震のゆれを再現する車両、避難所を設営し運営することをイメージできる「HUG」というカードゲーム、火災時の煙を体験できる設備、などなど。また、学校等を避難先として訓練する場合には、非常時の鍵の開け方や道具の使い方などの訓練も行われています。

人間には想像力が備わっていて、いくらかのものは、読んだり聞いたりすれば想像はできますが、やはり体験してみないとわからないこと、体験してみてわかることがたくさんあります。災害は、実体験となったときには、そこからどう判断し行動するかが命にかかわる重大な局面となります。その時点で「聞いて想像していたのとは違った」とならないために、出来るだけ体験できる機会は重要です。

なお、防災訓練には「非常食の調理訓練」や「炊き出しの調理訓練」とともに「食べる訓練(?)」があることも多いもの。参加者にとっては屋台が出ているようで楽しいのですが、これも実は大切な訓練です。実際に大人数のものを調理する体験は、日ごろはなかなかできないものです。

折角の機会ですから、まだ参加したことのない方、最近参加していない方は是非参加をしてみてはいかがでしょうか。その一日の体験は、いざという時に適切な判断に結びつくものになるでしょう。そして、備えでできる気持ちの余裕や適切な判断は、自分だけではなく身近な人を救うことにもつながるでしょう。

さぁ、知って備えていきましょう。

(社会福祉士・森保 純子)

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