11月からセブンイレブン8店舗で「時短」営業を本格始動 時代のニーズ、同社に対策を聞く

 コンビニエンスストアの国内最大手・セブンイレブンが「脱24時間営業」に乗り出す。セブン-イレブン・ジャパンは今年4月からフランチャイズ加盟店の時間短縮営業を230店舗(9月末時点)で実験的に行ってきたが、11月1日から第1弾として8店舗が本格的に時短へと移行する。同社に事実関係や対策をうかがい、専門家の見解を聞いた。

 セブンイレブン1号店が東京・豊洲に誕生したのが1974年。当初は「朝7時から深夜11時まで」という店名の由来が共通認識としてあったわけで、45年後の今、むしろ「原点」に戻りつつとあるという印象もある。

 今回、8店舗(店名は非公開)の時短営業が11月1日となった理由や今後を確認した。

 セブン-イレブン・ジャパンの広報担当は当サイトの取材に対して「4月から始まった『テスト運用』が6か月を越えたタイミング、かつ、1日からのスタートという意味合いで11月1日にさせていただきました。テスト運用を経ての『本実施』となります。今後、順次、本実施するかの判断は各オーナーさんによります」と説明した。

 脱24時間の背景には「人手不足」が指摘されている。大阪府東大阪市の店主が24時間営業をやめたところ、本部から契約解除と違約金を求められたことが今年2月に報じられてクローズアップされた。

 流通アナリストの渡辺広明氏は「本部とフランチャイズ契約したオーナーは個人事業主であり、労働者ではないため労務交渉ができない」と解説し、「契約更新率も減ってきている」と指摘。「人手不足などの労働環境、食品ロスといった社会環境が変わったことにより、脱24時間が余儀なくされている」と説いた。

 実際にコンビニ店舗を手伝っている渡辺氏は「深夜1時から朝5時までの間、1時間の間に来るお客さんは一桁の店舗が大半で、5人に満たない店もある。深夜から朝まで全店を開けておく必要がない。また、同じエリアにコンビニが複数ある場合も非効率的。店を閉めると配送の問題が起こるが、その対策として店外に『専用ボックス』を置き、ドライバーに鍵を持たせるなど、配送された商品を入れてもらう」と例を挙げた。

 セブン-イレブン・ジャパン側に対策をうかがうと、「人手不足」という言葉にこだわるのではなく、「オーナーへの後方支援」や「シニア世代の研修」といった方策を示した。

 同社は「人に関する部分ですと、オーナー様への対応です。当社ではアルバイトの募集に関してシステム的なバックアップをしています。例えば、応募のプログラムのコストダウン。24時間のコールセンターで、お店への応募の電話を(オーナーに代わって)対応します。また、オーナーヘルプ制度として、冠婚葬祭や急な疾病等に対して本部でバックアップします」という。

 さらに、外国人店員の増員について問うと、同社は「外国人の方にかかわらず、シニアの方たちも対象にした接客研修の場を設けています」と育成の方針を掲げ、「バックアップ策をしっかりして、オーナーさんが安心して経営していただく環境をご提供していきたい」と強調した。

 「いずれにしても『脱24時間』は時代のニーズ」と渡辺氏は語る。「80年代には『深夜族』が出てきて、90年代は『24時間戦えますか』というキャッチコピーが流行語になった。だが今は『働き方改革』で、働き方が問われている時代。脱24時間営業は進むでしょう」と分析した。

 そこで、ふと、思い出した。2011年3月11日の東日本大震災による福島第1原発事故から86日後となる6月5日、原発から20キロの警戒区域の境界線を記者が取材で訪れた際、近くに1軒あったセブンイレブンは午後3時閉店だった。住民は避難しており、警察官以外で人の姿を見かけない地域だったが、それでもコンビニは必要とされ、緊急事態における特例の“時短”が実施されていた。それは「必然」だった。極端な例ではあるが、今回の時短営業も、時代のニーズという「必然」が日常生活の中で顕在化した現象といえるだろう。

(デイリースポーツ・北村 泰介)

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