歩けなくなり捨てられたミニチュアダックス 今は里親と“同伴出勤”する究極の甘えん坊

 「保護犬」と聞くと、元野犬の雑種をイメージする人も多いかもしれませんが、特に都会では、チワワやミニチュアダックスなど人気の犬種が捨てられ、保護されることも珍しくありません。神戸で暮らすルカ君(推定11歳)も、大阪のある公園に捨てられていました。人目につきにくい場所につながれていたそうですが、運よく見つけてくれた人がいて、行政機関に保護されました。そしてその後、命に優しい社会づくりを目指し、捨てられた犬や猫の保護・譲渡活動を行っている「LOVE&PEACE NOA」に引き取られ、今は里親さんのもとで“幸せ太り”するほどハッピーに暮らしています。

 保護された当初、ルカ君は下半身を動かせませんでした。ヘルニアが疑われましたが、お尻の辺りから大量の出血が見られたため、NOAの阪上義昭さんが病院へ連れて行くと…野良猫に噛まれたと思われる傷がお尻にあり、膿が溜まって腫れ上がっていたことが歩けない原因と分かりました。「元の飼い主は、歩けなくなったルカ君を持て余して捨てたのかもしれません」と阪上さん。病院へ連れて行くこともせず、公園に捨てた元飼い主は、無責任としか言いようがありません。

 渡邉幸代さんがルカ君の里親になったのは4年前のことです。飼っていた犬を15歳で亡くし、半年が過ぎた頃。「自由な時間はできたけど、家の中に犬が歩く爪の音がしないのがさみしくなって…」(渡邉さん)。神戸市兵庫区にある「保護犬ふれあいカフェGUARDIAN」を訪れるようになった渡邉さんは、「保護犬」という存在を身近に感じ、インターネットで検索するようになりました。そこで、先代犬によく似たルカ君を見つけたのです。

 GUARDIANのオーナーに「どこかに気になる子はいないの?」と聞かれ、ルカ君のことを伝えると、「その子、もうすぐウチに来るよ!」と予想外の反応がありました。NOAとGUARDIANにはつながりがあり、「分離不安症」が見られるルカ君を預かることになっていると言うのです。“縁”や“運命”という言葉を思い浮かべずにはいられません。ルカ君はGUARDIANで約1カ月過ごしたのち、渡邉家でトライアル期間に入りました。

 ルカ君の分離不安症はなかなか手ごわいものでした。分離不安症の犬は、家の中でも常に飼い主の後を付いて歩き、飼い主が外出してひとりぼっちになると不安が募って、無駄吠え、食糞、自傷、粗相などの問題行動をしてしまったり、体調を崩す場合もあります。渡邉さんは、先代犬をかわいがり、預かってくれることもあった親戚に協力をお願いして、ルカ君を正式に迎えることを決めました。

 しかし…そこからルカ君の分離不安症は悪化してしまいます。渡邉さんがお風呂やトイレに入ると、ドアを開けて確認しに来るほど。相談した犬の幼稚園もお手上げ状態で、警察犬訓練所には「治せなくはない」と言われましたが、かなり厳しい訓練を強いられそうでした。「それはルカには向かないと思った」という渡邉さんは、上手に付き合っていく道を選択します。

 仕事をしている限り、留守番をゼロにはできません。そこで“同伴出勤”を思い付きました。幸い、勤務先は実家の会社。融通は利きます。ルカ君は毎日、マナーベルトをして出勤し、渡邉さんのデスクの下で帰宅時間が来るのを待っているそうです。

 とはいえ、仕事以外にも買い物など、外出せざるを得ないことがあるのではないでしょうか?

「長時間になるときは親戚に預けますが、30分から1時間程度なら“犬用防音ハウス”を買って試しています」(渡邉さん)

 痴呆症になり、昼夜を問わず吠えてしまう犬などのために開発された商品です。それでも心配なので、渡邉さんはできるだけ早く用事を済ませて帰ってくるそう。分離不安症の犬との生活はなかなか大変ですが、渡邉さんはルカ君との生活を楽しんでいます。

「こちらが想像もしないような奇想天外な行動をしてくれるので、楽しいですよ」

 そんな風に言ってくれる“お母さん”に出会えたルカ君は、本当に幸せです。取材中、ずっと渡邉さんの膝の上にいたルカ君。時々、顔を見上げては、「お母さん、まだ? 早くおうちに帰ろうよ!」と言っているようでした。

■取材協力=保護犬ふれあいカフェGUARDIAN

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