宮迫博之 隠し録りを否定…無断録音の証拠能力は…元アイドル平松まゆき弁護士が解説

 闇営業問題で吉本興業から処分を受けた雨上がり決死隊・宮迫博之が会見で、吉本興業の岡本昭彦社長と会談した際に「テープとってへんやろな」と録音していないことを聞かれたと明かした。宮迫は即座に否定したとしている。対立する両者間において、一方が会話を隠し録りした場合、法廷で証拠として認められるのか。かつて歌手デビューも果たした元アイドルの平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。

  ◇  ◇  ◇

 Q 宮迫さんは岡本社長との会話を録音していないと言っていますが、万が一の事態に備えて隠し録りしていた場合、それは訴訟で証拠として認められるのでしょうか。

 A ここでは仮にパワハラによる慰謝料請求訴訟ということを想定して回答します。まず民事訴訟における隠し録りについて、一般的基準を示したものとして有名なのが東京高裁昭和52年7月15日判決です。この事件は、お酒の席で相手に無断でふすま越しに会話を録音したというものですが、裁判所は「その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて(中略)人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは」証拠能力を否定する、すなわち証拠として使えないとしました。そのうえで、ふすま越しの録音も「反社会的」ではないとして証拠能力を肯定しました。ここでも闇営業問題で話題になっている「反社会的」という言葉が出てきてややこしいですが、ここでいう「反社会的」とは世間の常識に極端に反するという程度の意味だと思ってください。例えば、相手の自宅に侵入して盗聴器を仕掛ける行為等が「反社会的」であると考えられます。

 Q では、上司との会話をこっそり録音する程度ならば「反社会的」とは言えず、証拠として使えるのでしょうか。

 A 過去の裁判例の傾向からするとその可能性は高いと思います。ただ、近年、大学職員に対する上司のパワハラが問題になった東京高裁平成28年5月19日判決では、かなり秘匿性の高い個人情報が録音されていることや、非公開・録音禁止の運用がされていたこと等から、証拠能力を否定しました。例外的な要素のつまった事案だったと考えられているので、今後すべてのパワハラ問題でこの判決が適用されるわけではありませんが、否定例はゼロではないということです。

 Q 「お前らテープとってへんやろな」「そんなことしていません」とのやり取りがあったうえで、録音していた場合は裁判官の心証は悪いですか?

 A 現実社会では、隠し録りでもしなければ証拠が集められない場面もあると思います。自己防衛のためにやむを得ずにそのようなやりとりをしたのなら心証には影響しないのではないでしょうか。パワハラもそうですが、浮気問題も、隠し録りでもしなければ証拠が集められない典型だと思います。私の経験では、隠し録りのほか、LINE画面の撮影や興信所による調査資料について裁判官から苦言を呈されたことはありませんし、それらの証拠能力が否定されたこともありません。ただ、浮気した張本人である相手方から私の依頼者に対して「プライバシーの侵害だ。反対に慰謝料請求する!」と堂々と主張されたことはありますよ(認められませんでしたが)。

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 平松まゆき(ひらまつ・まゆき)弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハト オールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュ-。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。2010年に名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

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