紙芝居で「終活」指南? 閻魔大王の裁きがリアル過ぎる

 人生の終わりに備え、身の回りを整理する「終活」に取り組む人が増えています。とはいえ、必要と思っていても自分が元気なうちはつい、後回しにしがち。そんな中、紙芝居で終活の大切さを訴えている紙芝居師がいると聞き、取材しました。

 紙芝居は「じいさん地獄へ行く」。ある日、一人のおじいさんが、スマホ運転の自転車とぶつかったところから始まります。助かった…と思ったら、そこは三途の川。鬼曰く、おじいさんは人工呼吸器で1年近く延命治療を受けており、治療費がかさんで家族は困っているとのことでした。

 閻魔大王の前に引き出されて審判を受けるおじいさん。「遺言書は」と聞かれ「書いてある」と言いますが、入れているのは銀行の貸金庫。相続人全員の承認がないと開けられず、子どもの一人は遠方に暮らしているため承認が得られません。パソコンのパスワードも分からず、部屋はカメラや写真など趣味のものが詰め込まれたまま。

 押し入れには使わなくなった手彫りの机や壊れた家電が詰め込まれ、一見片付いているようですが、のこされた子どもたちには何が必要か全くわかりません。閻魔様が、「何をどうするか子どもと話し合ったか?断捨離してきたか?」とおじいさんを問い詰める中、米・カルフォルニアから娘が戻ってきて尊厳死について語り始め…と、なかなにリアルで、現代の事情も盛り込んだ内容です。

 制作したのは、大阪市の紙芝居師、藤井一さん(63)。アパレルメーカーを53歳で退職した後、声の良さを見込まれナレーターに。その後、街頭紙芝居の世界に引かれて講座に通い詰め、2016年1月から「菅原春秋堂」として活動し始めました。

 「要点を分かりやすく簡潔に伝える紙芝居は、実はパワーポイントと同じプレゼンツール。語りと合わせれば、その表現はもっともっと広がっていく」と藤井さん。古典的な子ども向け作品だけでなく、環境などSDGs(持続可能な開発目標)をテーマにした作品や大人向けの作品も手掛け、各地で講演やワークショップを開くほか、表現力や「伝えたいことを効果的に伝える」伝達法を指南したりしています。

 今回の終活紙芝居もその一環で、知人の生前整理業者から苦労話を聞き、リアルさにこだわって作り上げました。「知人曰く、写真(アルバム)が一番処理に困る物で、押し入れの8割はいらない物だそうです」と藤井さん。「このおじいさんのように、元気だと思っても突然事故に遭うかもしれない。紙芝居をきっかけに、親子で話し合うだけでもコミュニケーションになるんですよ」と話します。

 「終活」には早いと思っている方も、とりあえず押し入れの中を見直してみませんか? 私も…逃げずに向き合うようにします…。

(まいどなニュース・広畑 千春)

菅原春秋堂https://www.fujii-1.com/

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