Twitterは140字のエンタメ 個性派俳優・佐藤二朗の上手な付き合い方

Twitterのフォロワー数は130万人超。炎上とは程遠い、日常のほんわか悲喜こもごものつぶやきが魅力で、晩酌時と思われる“呂律の回っていない”つぶやきも人気。画像をほとんど載せず、140字を埋める律儀な姿勢もいいし、実はガラケーで投稿しているというアナログさもニクイ。出演作の予告編などのURLを正しく書き込むことができず、悪戦苦闘するつぶやきも微笑ましい。個性派俳優・佐藤二朗(50)のTwitterのことだ。佐藤にとって最初は「書く欲求のはけ口」だったTwitter。しかし今では「140字のエンターテインメント」と捉えている。その付き合い方を聞いた。

Twitterを始めたきっかけは、主演映画宣伝の一環。つぶやきを投稿するうちに、自分の心にもアカウントにも火がついた。それから7年。佐藤の金言的つぶやきをまとめた書籍『佐藤二朗なう』が出版されたり、つぶやきの内容がネットニュースに引用されたり、何かと注目の的になっている。

「役者は演じることだけに集中する方がストイックだし、やらしい話イメージ的にもお得。でも自分には演じる欲求とは別腹で、文章を書きたいという欲求があった。役者としてのイメージも正直大事だけれど、書く欲求に従うのも自分としては同じくらい大事。Twitterでのつぶやきは、自分の書く欲求を吐き出すことが目的だった」と当初の狙いを明かす。

ところが、気がついたらフォロワー数は130万人を超えた。『はははは』との笑い声の文字化に対して7万“いいね”がついたりする。「書く欲求を吐き出すことが目的であっても、その140字は世に出るわけで、ありがたいことにフォロワーさんが沢山ついた。今ではTwitterは140字のエンターテインメントだと思っています。『はははは』に7万“いいね”がつく理由はさっぱりわからんけれども(笑)、つぶやきをわざと全部ひらがなにしたり、文章を逆にしたり。そんなことをやっていくうちに、楽しませることにルールはない、エンタメとは自由だと思うに至った」。

画像や動画ではなく、なるべく文字で読ませたい。だからInstagramではなくTwitter。自分のつぶやきで他者を傷つけないこともポリシーだ。「投稿する前に文章の推敲をするか?それはご想像にお任せいたします。気をつけているのは、自分のつぶやきで人を傷つけないこと。日常生活でもそうですが、本筋とは別のところで怒りを買ってしまったり、人を悲しませたりすることってあると思う。Twitter上でもそういうことがないよう意識しているつもりです」。

ゆるいつぶやきの中にときおり投稿される、父親として夫として7歳の愛息子や愛妻への想いを込めたつぶやき。『はははは』からの不意打ちのようなカウンターパンチに、ジーンとするフォロワー続出。例えばこれ。『晩酌。嫁に「夢みたいだな」と言った。25年前、2人で風呂なしアパートに住み、銭湯通いしてた頃を思い出し、ふとそう言った。「随分、遠くまで来た感じ」と嫁は言った。「もっと遠くまで行こう」と言うと、嫁は少し笑った。ごめん、俺の嫁、やはり最高。遠くまで。皆様、よければお付き合いを。』…“いいね”は22万を超えた。

当該ツイートを読み上げた刹那「ほんっとにこっぱずかしい!酔ってました!あのようなツイートはやめなければいけないと思う」と悲鳴を上げる佐藤だが、一度投稿したつぶやきは滅多なことがない限り削除しない。「ありがたいことにフォロワーさんもたくさんいますから、消せません。削除するということは、そのつぶやきをリツイートしてくれたり、“いいね”を押してくれた人の気持ちやリアクションも消すことになるから。いや、でも正直消したいよ、本当にこっぱずかしいよ、あなた」と冷や汗タラタラだ。

U-NEXT・カンテレで放送される『「このミス」大賞ドラマシリーズ』(7月4日スタート)に俳優として出演するほか、特別審査員およびクリエイターとしても関わる。映画監督作2作目も仕上げの真っ最中だ。50代に突入しても多忙な日々。忙殺の中でふと思い出すのは、母親や妻に言われた「謙虚であれ」という言葉。

「この歳になると、共演者やスタッフが自分よりも若くなる。そんな中で『俺には俺のやり方があるんだ!』となったら、もらえるはずの意見ももらえなくなる。50代になって『謙虚であれ』という言葉が腑に落ちることが増えた。謙虚でいれば、いい仕事ができる」。五十にして天命を知る。俳優業もクリエイター業も、そしてTwitterもまだまだ伸び盛りだ。

(まいどなニュース特約・石井隼人)

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