戦国女子は男子顔負けの戦闘能力 本多平八郎忠勝の手記を現代のデータが証明?
謎に包まれた戦国合戦の真実に迫る「戦国体感セミナー」がこのほど大阪市内で開催された。主催したのはテレビ、映画などで戦国時代の武器の実演、解説をしている日本甲冑合戦之会(大阪市城東区)の横山雅始代表。過去に実施した「ガチ甲冑合戦」から得られたデータを広く伝えようとするマニアックでユニークな試みだ。結果、戦国女子の戦闘能力が男子顔負けだったことも証明されたという。いったい、どういうことなのか?
その目は真剣そのものだった。戦国時代の武器、戦術などは謎に包まれた部分が多いとあって、受講者は熱心に耳を傾けた。横山代表は「実は戦国時代に関する資料は少なく、現在、私たちが知っている武術のほとんどが平和な江戸時代に確立されたもの。戦国時代以前の戦い方は実際に検証しながら解明していくしかないんですよ」と話す。
もちろん、本当の合戦はできない。そこで、同会では安全面を考慮しながらもリアルに近い形の「ガチ甲冑合戦」という模擬戦闘を開催。地域振興や国際交流、インバウンドの促進に貢献しつつ「桶狭間の戦い」「川中島の戦い」など歴史に残る合戦を20回以上再現してきた。
今回のセミナーは、その検証結果をまとめたもの。これまで「ガチ甲冑合戦」の前日にリハーサルを兼ねて戦国時代の戦い方を伝えていたが、国内向けの本格的なセミナーは実は初めてという。
「インバウンド向けの戦国武術セミナーは毎年2、3回に分けて開催し、10カ国100名ほどが参加していました。しかし、日本のみなさんに座学で当時の武器や戦術などをじっくりと解説する機会がなかったので、今回はセミナーを独立させ、その後に実践してもらう形式で行いました」
迎えた当日、午前中は「サムライの戦い方」として、戦国時代の武器や戦術をたっぷりと2時間学んだ。主催者によると「当初は30人の参加者で行う予定でしたが、倍の応募がありました」とのこと。「希望者が多かったのは戦国時代の武器や操作方法と戦術などをテーマとするセミナーが珍しいということと、ガチ甲冑合戦で検証した結果の発表にも興味があったようです」と話した。
講義内容は鉄砲、槍(やり)、弓、刀の順で進む。織田信長が考案したといわれる6メートルの長槍は最初の一撃こそ効果はあったものの、あまりに重すぎて防御には適さなかったと結論。あらためて「槍は突くものではなく、叩くもの」という点を強調した。続いて弓-。現在の弓道とは違い、戦国時代のそれは速射性を重視したという。横山さんが撮影に協力した「映画刀剣乱舞」の火矢のシーンや「花の慶次」公式FBの動画などで違いを理解した。刀については戦国時代以前の製法は正確に解明されておらず、使い方も実は江戸時代とは違っていたという。戦場では短刀と槍がセットとして威力を発揮していたとのことだ。
講義のあとは、それを踏まえた上での実践だ。女性の参加者が3分の1と相変わらずの人気。この日は季節外れの高温となったため、熱中症にも気を配りながら実演となったが、いざ、合戦となると白熱した戦いに。
興味深いことに、スポンジの刀を使った10対10の戦いでは最後に勝ち残った4人中、なんと3人が女性。ところが、これはある意味史実通りだったようだ。徳川四天王の1人、本多平八郎忠勝の残した手記には「攻め込まれた時は陣場を守るだけでなく、剃った眉を炭で太くかき、口はビンロウジュやザクロを噛んで赤黒く染め、ワァーッと真っ先に突進して行く。当今の武者よりよほど勇ましかったものだ」と女性兵士に関する記述がある。翻って令和の時代、女性登用は必然なのかもしれない。
参加者した女性は「相変わらずの歴女人気。私のようなマニアがこんなにもいるのかと驚きました。次回の合戦にはぜひ参加したい」と意気込んだ。気になる次回のスケジュールだが、当初7月に「伊勢忍者キングダム」と決まっていたが、猛暑が予想されるため秋に延期。詳細は後日、主催者から発表されるという。(まいどなニュース特約・山本智行)