子どもの教育費どう確保? 児童手当・幼保無償化で浮いたお金はまず貯蓄!

幼稚園~高校までにかかる学習費
大学の入学料・授業料・施設設備費
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 先行きが見えない現代。収入増もなかなか見込めない中、子育て世帯にとって大きな負担となっているのが「子どもの教育費用」です。できるだけのことをしてあげたいけど、わが家の家計状況で大丈夫だろうか…。そんな不安を抱えている家庭も多いのではないでしょうか。

 漠然とした不安を断ち切るためには、具体的な数字を把握し、対策を考えることが大切です。子どもの教育費がどれくらいかかるか、データをもとに見ていきましょう。

■ 幼稚園~大学までにかかる学費の合計は?

 まずは幼稚園から高校にかかるお金から。文部科学省の「子供の学習費調査」(平成28年)によると、幼稚園~高校までにかかる教育費は、全て公立に通ったとして約540万円、高校だけ私立に通った場合は約716万円、全て私立に通った場合は約1,770万円という金額になっています。

 高校卒業後も進学先によって大きな差が出ます。国公立の大学に通った場合4年間で約243万円ですが、私立大学文系の場合は約397万円、私立大学理系の場合は約540万円。専門学校は学ぶ分野や年数によっても異なりますが、平均すると3年間で約340万円が必要。さらに私立大学医・歯学部系の場合は6年間で2,300万円以上というケタ違いのお金がかかります。※1

 これらのデータを見ると、幼稚園から大学まで最も安上がりなルートでも約783万円の費用がかかっています。さらに遠方の大学などに通う場合は、プラスで交通費や下宿費用もかかりますし、理系の学部なら大学院に進学するケースも多いので、その費用も見込んでおく必要があります。

 お金は一度にまとめて支払うわけではありませんが、教育費が子育て世帯にとって大きな負担になっているのは否定しようもない事実です。

■ 幼児教育・保育や高等教育の無償化は子育て世帯の助け船?

 ただし、今回ご紹介したのは現在かかっている教育費。こうした子育て世帯にかかる金銭的な負担を緩和するために、次のような教育費の軽減措置が決定しました。

 一つは幼児教育・保育の無償化です。2019年10月から3~5歳児がいる全ての世帯を対象(住民税非課税世帯は0~2歳も対象)に、認可保育所や認定こども園、幼稚園などの利用料が原則無償となります。

 2020年4月からは高等教育の無償化もスタートします。これは原則住民税非課税世帯の学生を対象に、大学や短大、高等専門学校、専門学校の授業料と入学金が減免される制度で、返済不要の給付型奨学金も拡充されます。

 いずれも子育て世帯にとってありがたい制度ですが、大学などに関しては無償化される家庭はごく一部。多くの世帯では依然として大きな負担がかかることに変わりはありません。やはり、「教育資金を計画的に貯めておく」ことは必須なのです。

■ 賢く貯める方法は?

 ではどのように貯めていけばいいのか? 貯め方のポイントをご紹介しましょう。

▽高校までのお金は家計の範囲でやりくり

 大きなお金がかかるのはなんといっても大学や専門学校です。子どもの学びたい分野や行きたい大学などが早いうちから決まっていれば、ある程度想定してお金を貯めておけますが、ギリギリになってから進路が決定することも少なくありません。想定外のケースにも対応できるよう、余裕を持ってお金を用意しておきたいもの。そのためにも、高校までの学費は貯金を取り崩すことなく、家計から捻出するのがベターです。

 私立中学・高校は教育カリキュラムが魅力的なところも数多くありますが、大学進学を目指すなら、貯金を優先して公立校に行くほうがいいことも。習いごとや塾にかかるお金も進学費用を貯めた上で、無理なく家計から捻出できる範囲にとどめたいものです。塾にお金をかけすぎて、大学の費用が足りなくなってしまうのは本末転倒だからです。

▽子ども名義の口座にとりわけて貯金を

 子どもが中学校を卒業するまでもらえる「児童手当」は、可能な限り将来の教育資金にとっておきたいもの。しかし手当を振込口座に入れたままにしていると、つい生活費の一部として使ってしまいがちです。子どもの名義の口座をつくり、そこに取り分けておけば、うっかり使ってしまうことがなくなります。児童手当を0歳から手をつけずに貯めておけば、中学校卒業までに約200万円のお金が用意できます。※2

 また、10月から幼稚園・保育園の費用が無償化されるので、浮いた分のお金を「使ったつもり」で子ども名義の口座に貯金しておけば、将来の教育資金に。例えば現在、保育園や幼稚園に月3万円前後のお金がかかっているなら、その分を貯金すると3年間で100万円近いお金が貯められます。

 さらに可能であれば、財形貯蓄や銀行の自動積立などを活用した給与からの「先取り貯蓄」を。0歳から18歳まで月1万円貯めたとすると、約200万のお金が用意できます。

 児童手当分が約200万円、幼保無償化分が約100万円、自動積立分が約200万円、これで約500万円のお金が準備でき、大学等の資金として心強い金額になってくれます。

■ 貯金と同じくらい大切なのは…

 一方でどれだけがんばって貯金しても、一般家庭で用意できるお金には限界があるのも事実です。例えば高額になる私大医学部のお金を工面できる家庭はそう多くはありません。場合によっては、子どもが希望する進路を変更したり、奨学金や教育ローンを利用したりするケースも出てくるでしょう。

 子どもがある程度大きくなったら「家計状況をしっかり説明しておく」のが、お金を貯めるのと同じくらい大切です。例えば、「ここまでは出せるけど、これ以上の額が必要な学校へ行く場合は奨学金を借りてほしい」「学費は出せるけど、交通費や携帯電話のお金は自分でアルバイトして出してほしい」など。

 子どもは家計の状況や進学にかかる費用をはっきり把握していないこともあります。それらを説明しないまま進学を断念させるのは、子どものやる気を大きく削いでしまうことにもなりかねません。

子どもにとっても自分の学力や希望、経済状態を見ながら、納得できる進路を選べるのがベストではないでしょうか。(ファイナンシャルプランナー・田中瑛子)

    ◇  ◇

※1 国立大学は国が示す標準額。私立大学は文部科学省「平成29年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」、専門学校は東京都専修学校各種学校協会「平成30年度 学生・生徒納付金調査」をもとに作成した概算。国立大学・私立大学(文系)(理系)は4年、専門学校は3年、私立大学(医歯系)は6年として、「入学金+×通学年数×(授業料+施設利用費)」で計算。いずれも昼間部。

※2 第1子・第2子で所得制限以下の場合

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