“雑誌離れ”に抗い隔週発行を貫く 損得にシビアな関西人の心つかむ手法

「関西ウォーカー」の篠原賢太郎編集長
「関西ウォーカー」創刊号(左上)からの表紙の変遷。ギラギラ感は現在とほとんど変わらない
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 全国のエリア情報誌が休刊したり、発行間隔を延ばすなど苦戦を強いられる中「関西ウォーカー(KansaiWalker)」(KADOKAWA)は1994年6月の創刊以来、隔週(年24~26回)発行を貫いている。事前に下調べし、納得した情報を“盛らず”に載せるリアルさ、実際に足を運んでみたいと思わせる作りこみの丁寧さで、損得にシビアな関西人の心をしっかりとつかんでいる。

 毎年恒例の花火特集。ページをめくると関西各地の花火大会について会場までのルートを複数取り上げ、どの時間帯を狙えば混雑が避けられるかといった情報まで載せている。「1年前に編集部スタッフが現地で何度もルートを行き来し体感した情報をもとにまとめています」と足で稼ぐ情報の大切さを説く篠原賢太郎編集長。ネット上に多くの情報があふれる中「コースをどう歩けばいいかイメージしやすいよう誌面いっぱいで地図を使っています」と紙ならではの優位性を最大限に生かした誌面づくりを行っている。

 先ごろ600号を記念し、誌面で90年代を振り返る「関西ウォーカークラシック」を発行した。「あらためて読み直してみるとやってきたことは変わらない」と篠原編集長。その編集方針は三つにまとめられるという。

 まず「行動支援」。「見て楽しいで終わるのではなく、細かいモデルコースを提案するなど行って満足してもらうことを考えています」。

 二つ目が「本音とリアル」。「取り上げる店はなるべく覆面でリサーチをし、サービスなどが悪ければ取り上げません」。今春からスタートしたヒット企画「大調査40」は、コンビニなどで買える商品40アイテムを実食調査しランキング評価。「タイアップはなし。編集スタッフの公正な視点で評価しています」とジャーナリズム性にもこだわる。

 そして最後に「リージョナル誌」であること。「関西ウォーカーでなくてもできるような話題は取り上げないようにしています」。

 エリア情報誌の草分けと言えば「ぴあ」。72年に東京で創刊し、85年に「ぴあ関西版」を発刊したが2010年に休刊。また、関西に拠点を置く京阪神エルマガジン社が77年に発行した情報誌「Lmagazine」も08年で休刊した。

 「関西ウォーカー」はKADOKAWAが90年に発刊した「東京ウォーカー」に次いで発刊された。姉妹誌の「東京ウォーカー」「東海ウォーカー」「九州ウォーカー」「横浜ウォーカー」がWeb版への比重を強めていることもあり、月刊や隔月刊へと発行頻度を減らす中で「関西ウォーカー」の奮闘ぶりが際立つ。同編集長は「同じテーマでも大阪、京都、神戸という個性が異なる都市があるおかげで読みごたえのある誌面づくりができることも大きい」と分析した上で「もちろん(隔週発行の)意地もあります」と笑った。

 ネット情報の台頭で発行部数は90年代後半に記録した60万部から現在は5万部弱にまで減っているが「近年は下げ止まり傾向にある」そうで「号によって売り上げの上下もなくなり、固定ファンがしっかりついてくれているのを実感しています」。一方、雑誌販売の落ち込みをカバーしているのがネット上の雑誌読み放題サービスだ。「以前は冒頭ページはニュースやトピックを載せていましたが、ネットの読者がすぐに特集を読めるよう今年から特集ページを先に持ってきています」と変化への対応も怠らない。

 ピンクや黄、赤、青を使ったタイトル文字をてんこ盛りに詰め込んだ表紙のギラギラ感も創刊以来続くお約束だ。「値段に対しどれだけの情報が詰まっているかを見極める関西人向けならではの表紙」と篠原編集長。時代は移り変わっても、編集部と読者の熱量は変わらない。(デイリースポーツ特約記者・山口裕史)

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