田口ついに世界奪取!苦節9年6カ月
「WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ」(31日、大田区総合体育館)
WBA世界ライトフライ級タイトルマッチは、世界初挑戦の田口良一(28)=ワタナベ=が、王者のアルベルト・ロセル(39)=ペルー=を3-0の判定で破り、新王者となった。WBAスーパーフェザー級王者の内山高志(ワタナベ)は、同級8位のイスラエル・ペレス(アルゼンチン)に9回終了、TKO勝ちして日本歴代3位に並ぶ9度目の防衛。WBAスーパーフライ級王者の河野公平(ワタナベ)は同級5位のノルベルト・ヒメネス(ドミニカ共和国)と引き分け、初防衛に成功した。
老かいなロセルを手数と粘りで追い詰めた。田口はジャブとボディーを軸に試合を支配。8回と9回、狙っていた左ボディーでダウンを奪った。終盤の猛攻もクリアし、3-0の判定勝ちで世界を取った。
それでも「KOしたかった。昨日、井上(尚弥)君が衝撃的な勝ち方をしたので、自分もと思ったけどダメでした」と、新王者らしくない言葉が口をついた。
ボクシング人生の節目には、日本人最速の2階級制覇を成し遂げた井上がいる。7歳下の尚弥がアマ時代、ジムに出稽古にきた。スパーリングの相手をしたが1、2回と倒され、4回の予定が3回で強制終了。「泣きました」と振り返る。日本王座も初防衛戦で尚弥に判定で敗れた。
わだかまりはない。試合前、控室を訪れた尚弥から「頑張ってください」と激励された。「好青年ですよね」と評する。KOで応えたかっただけに一抹の悔しさがある。
苦労人だ。07年に全日本新人王を獲得しながら、翌年ヘルニアを手術し、約1年のブランクを経験した。伸び悩み、引退を考えたこともある。踏みとどまらせたのが「十年たてば変わる」という言葉。「石の上にも三年」ならぬ「十年」辛抱する覚悟だった。あと半年で10年、ついに尚弥と同じ舞台に立った。
優しすぎる風貌からは想像できない激しいファイトスタイルで「つよカワイイ」がニックネーム。話しぶりも穏やかで「初対面の人にボクサーと見られたことがない」と言うが、芯は強い。
体が小さく、子供の頃は学校でいじめられた。「親には言えず、こっそり泣いていた」と言う。そんな体験がボクシングを始めた原動力だ。初めて通ったボクシング教室は、この日と同じ大田区総合体育館だった。総勢300人の応援団の中には、当時のいじめっ子たちの姿もあった。