水の中では、性別の境界もこれまでの常識も静かに揺らいでいく。女子競技として歩んできたアーティスティックスイミング(AS)に、少しずつ男子の姿が増えている。まだ道は細く、先は見えない。それでも、音楽に身を委ね、水しぶきの向こうへ泳ぎ出す若者がいる。変わり始めた競技の、その先を見つめた。

ASの日本選手権男子ソロフリーで優勝した相高平蔵=5月、東京アクアティクスセンター
ASの日本選手権男子ソロフリーで優勝した相高平蔵=5月、東京アクアティクスセンター

16歳のホープ

 長い手足はひときわ目を引く。笑顔をつくり、懸命に演技した。5月、アーティスティックスイミングの日本選手権。3種目を制した16歳、相高平蔵は日本のホープだ。

 1988年ソウル五輪銅メダルの小谷実可子ら多くの日本代表を輩出した名門、ミキハウス東京ASクラブで初の男子の選手。競泳に取り組んでいた小学校2年の時、現在日本代表の姉、花帆(19)がやっていたASを見て「音楽に合わせて演技しているところが楽しそう」と始めた。