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神様の失敗?人間よりも早く尽きてしまう卵巣の寿命 キャリアウーマンを襲った動悸やホットフラッシュ

総合病院で産婦人科医として勤務した後、レディースクリニックを開業してあっという間に20年以上たちました。その間、たくさんの患者さんに来院いただきました。幼稚園に通っているお子さんから90代の御高齢の方まで、いろいろな方が来られるのですが、患者さんの年齢には二つのピークがあります。一つは月経不順や月経痛といった悩みを持つ20代、もう一つは様々な心身の不調に悩む40代から50代です。

初潮年齢の平均は12歳で、閉経年齢の平均は50.5歳くらいです。40代半ばから卵巣機能が衰え始め女性ホルモンが減少し、それまで女性ホルモンによって守られていた身体に様々な不調がでるようになります。閉経を中心に前後10年間(45歳~55歳くらい)を更年期と呼びます。

昔は女性の平均寿命は50歳に届きませんでした。花の盛りに死んでいく人が多かったのです。昭和22年の日本女性の平均寿命は53歳です。それが今では88歳。なんと30年以上女性ホルモンなしで生きていかねばならないのです。人間の寿命より早く卵巣の寿命が尽きてしまい、女性ホルモンを作れなくなるのは神様の失敗だといわれています。更年期には様々な不調が現れることが多いのです。

Mさん(51歳)は2人の子供を育てながら会社ではバリバリ働いているキャリアウーマンです。これまではテキパキ仕事をして上司からも部下からも認められてきたのに、最近仕事中に急に不安になり動悸がするようになりました。緊張すると顔が熱くなり、汗がでてきます。帰宅するとどっと疲れを感じ何もする気になれません。以前なら休日は子どもとの外出を楽しみにしていたのに、日曜日はソファに寝転んでゴロゴロして過ごすようになりました。夜中にも急に動悸がして目が覚め不安のあまり手足が震え冷や汗が出てきました。

心臓の病気かと思い内科で検査を受けても異常なしはありません。会社の同僚に話したところ「あなた更年期じゃないの」と言われハッとして当院を訪れました。月経周期について質問すると「1年くらい前から不順になり、最後の月経は3カ月くらい前です」とのこと。採血して女性ホルモンの1種エストロゲンを測定してみるととても低下していることが分かりました。

「少し女性ホルモンを補充してみますか?毎月生理が来て面倒かもしれないけどいいですか?」「楽になれるなら何でもいいです」ということでMさんはホルモン補充療法(HRT)をうけることになりました。

効果はすぐに現れ、まず動悸がなくなり、夜も眠れるようになりました。急に熱くなったり、汗がでることもなくなり、Mさんが一番驚いたのは仕事への意欲も湧いてきたことでした。そのままホルモン補充を続け1年ほどたった頃「私最近昇進試験に受かったんですよ。ホルモン補充をしていなかったらとても試験を受けようなんて気持ちにはなれませんでした」と嬉しそうに語ってくれました。

Mさんにはホルモン補充療法がとても効果がありました。けれど全ての更年期の方が女性ホルモンさえ投与すればOKというわけではありません。人間の心と体は複雑で一人一人の体質や生活環境も違うわけですから、患者さんそれぞれに合った治療を探さねばなりません。

◆川口 惠子 神戸大学医学部卒、神戸大学医学部大学院卒、医学博士。神鋼病院産婦人科部長を経て平成13年より川口レディースクリニック院長。趣味はコンピューターグラフィックスと英会話 いずれも才能も情熱もないため全く上達せず。

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