【松本浩彦医師】人ひとりの体内に太陽系の直径3倍に及ぶDNAが入っている

 人間の体は60兆個の細胞で構成されています。そしてその全てにまったく同じ遺伝情報が組み込まれています。この遺伝情報はDNAと呼ばれ、A・T・C・Gの4種類の塩基が対をなして二重らせん状に並んだ、単なる化学物質の名称にすぎません。

 しかし前述の4種類の遺伝アルファベットとも言える塩基はなんと30億対も並んでおり、人の遺伝情報はこの4種の遺伝アルファベット60億個の羅列なのです。

 ただし30億塩基対すべてが役に立っているかというと、実はほとんどがダミーで、実際はそのうち3%ほどが人の体の設計図として利用されているにすぎません。平均して2千塩基対ほどの塊が遺伝子領域=遺伝子と呼ばれる部分で、およそ3万カ所と予測されています。DNAは遺伝情報の全てを指し、その中で人の構造タンパクを作る設計図となる領域が遺伝子です。

 細胞一つの中で螺旋状に渦巻いている30億塩基対のDNAを一本に伸ばすと約1・6メートルになり、60兆個の細胞すべてに同じDNAがありますので、これをつなぎ合わせると100兆メートル=千億キロに及びます。太陽系の直径が360億キロとしてその3倍。人ひとりの体の中に太陽系の直径の3倍に及ぶDNAが入ってるのです。

 DNA鑑定という言葉をテレビでよく聞きますが、何も30億全部を調べているわけではありません。人には数塩基を単純に繰り返す特異的なDNA領域がいくつかあり、現在はそのうち15カ所を調べることで個人を特定しています。「DNAが一致した」ではなく正確には「DNA型が一致した」なのです。刑事ドラマを観ていると、微妙に呼び方が違っているので注意してみてください。

 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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