【松本浩彦医師】「生きたまま腸に届く」が“売り”になる理由 腸内フローラとは?

 最近テレビでよく耳にする「生きたまま腸に届く」というコピーに「腸内フローラ」。一体なんのことでしょう。実は今、腸内環境の悪化は世界的に問題となっています。ヒトの腸の中に棲息する微生物は100兆匹以上。総重量に換算すると肝臓とほぼ同じ重さで腸内細菌は目に見えないもう一つの臓器ともいえます。

 腸内で「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つのグループが、花畑のように敷き詰められている状態で、植物が種類ごとに集団を作って群れている「叢」に例えられ腸内フローラと呼ばれます。

 腸内細菌の存在は昔から知られていましたが、近年の科学技術の進歩により、腸内細菌のDNAを調べることでその働きが解明できるようになり、腸内環境があらゆる疾患に関係し、人の生命維持に重要なものだと判ってきました。

 健康な人の腸内フローラは「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」で存在しているのが理想的とされます。乳酸菌やビフィズス菌などに代表される善玉菌は、その名の通り免疫の活性化、ビタミン合成、消化吸収、さらに、がん・糖尿病・うつ病との関連も指摘されています。

 胃の中は胃酸の影響で常に強い酸性に保たれています。ちなみに胆汁は強アルカリ性。胃酸にも胆汁酸にも負けず、生きたまま腸に到達する善玉菌でないと意味がありません。これには二つの手段があって、まず単純に酸やアルカリに強いこと。もう一つは芽胞といって自分で殻を作り、その中に閉じこもって胃や十二指腸を通過して腸に着いたら芽を出して菌として活動する。

 このどちらかの性質を持っている善玉菌を摂取することが必要となります。だからテレビのCMで、「生きたまま腸に届く」が「売り」になるんですね。

 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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