【窪谷日奈子医師】美人を見ると開いてしまうのは?目を見ると気持ちが分かる

 私がまだ研修医だったころ、同僚の先生が私に「見て!すごく美人な看護師さんがいる!」と耳打ちしてきたことがあります。よほど興奮していたのでしょう。私に話しかける彼の瞳孔が、ぱーっと開いていくのが見えました。まるでマンガに出てくるような彼の目に大笑いしてしまったのですが、眼科医になってその理屈が分かりました。

 「目は口ほどにものを言う」と言いますが、実は医学的にもこれは本当のようです。茶目の中央にある黒目の部分を瞳孔といいますが、この瞳孔は感動・不安・驚きなどで交感神経が刺激された時に反射で大きく開く(散瞳する)とされているからです。

 冒頭で美しい女性を見たときの男性を例にあげましたが、人は好意を持ったときに散瞳することが多いようです。瞳孔の動きは自分の意志でコントロールすることはできませんので、「美人がいる!」と思った瞬間に勝手に瞳孔が開いていくわけですね。

 意中の人を前にしたときは、相手の瞳孔の変化をさりげなくチェックしてみると自分に脈ありか分かるかもしれません。ただし女性は赤ちゃんを見たり、かわいらしいものを見ただけでも散瞳するそうなので、男性の方は早合点することのないようにご注意くださいね。

 ちなみに、もともと瞳孔はカメラの絞りにあたる部分で、暗いところで大きくなり明るいところでは小さくなる性質があります。目の中に入る光の量を調節し、ピントを合わせる仕事をしてくれているのです。

 私たち眼科医が目の奥を診察するときには、この瞳孔の中心から目の奥を見る必要があるのですが、あまりにも瞳孔が小さいと奥が見えにくくなります。そこで病気がないかすみずみまで確認をしたいときには、目薬で強制的に瞳孔を大きく開く必要が出てきます。

 目薬で無理やり瞳孔を開くと数時間、人によっては半日近く瞳孔が開きっぱなしになります。絞りが働かないと光が入ってとてもまぶしいですしピントも合わなくなりますので、車を運転することが危険になります。

 ですので私たちは散瞳検査をするとき、事前に「車を運転してこないように」とお伝えするのですが、忘れて車や自転車で来てしまう人が多いです。大切な検査ができなくなりますし、後日来ていただくとなると二度手間になるので、眼科にかかるときは車で受診しないようにお気を付けくださいね。

 ◆筆者プロフィール 窪谷日奈子(くぼたに・ひなこ)医療法人社団吉徳会・あさぎり病院・眼科医長。眼科専門医。

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