【松本浩彦医師】食中毒は10日後に発症することも

 この時期になると、明らかに食中毒、という患者さんが多くなります。ところがみなさん「食あたり」というと、食べてすぐに発症する、食べた全員が発症する、といった固定観念をお持ちの方が多いのですが、それは誤っています。

 家族で同じ物を食べても、たまたま原因となる一皿をその人が大量に食べた場合、その人だけ発症します。個々の体調だってあるでしょうし、胃酸がたくさん分泌されている人は大丈夫でも、そうでない人もいます。

 また、直近に怪しい食材を食べていない場合、我々は「1週間ほど前に、焼き鳥屋さん、行ってない?」と尋ねます。意外と当たるんですね、これが。キャンピロバクターという細菌は、生、あるいは加熱不十分な鶏肉に多く生息します。他の食中毒菌と比べて腸内での繁殖が遅いため、食後7~10日後に発症します。

 熱も出ますし、頭痛や筋肉痛などもあるため、カゼと間違えられることもありますが、下痢は必発ですので、プロなら診断は容易です。ニューキノロン系の抗菌剤がよく効き、入院するほどの重症化はありません。肉からサラダなどへの二次感染もありますので、夏場の外食は、行くなとは言いませんが充分注意してください。

 これとは別に、食べてすぐ起こる食中毒は、その辺に常在する黄色ブドウ球菌から出る菌毒素によるもので、古くなった、おむすび・牛乳・卵焼きなど、食べて数時間で腹痛・嘔吐からはじまります。他にもサルモネラや腸炎ビブリオなど、食後すぐに発症する原因菌もたくさんあります。

 梅雨から夏にかけて、食材が傷みやすい季節になります。古くなったものは食べない、できるだけ加熱したものを食べるなど、予防できることはしっかりやっておきましょう。

 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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