【松本浩彦医師】日本人の2人に1人は…「がん」になる人が多い理由

 最近「日本人の2人に1人はがん」なんて言葉、よく耳にしますよね。でもこれは決して、日本人が「がん」にかかりやすい民族・人種である、ということではありません。

 がんとは細胞の突然変異です。がんの発生原因でいうと遺伝的要因は5%。喫煙が30%、肥満が30%、飲酒が3%、紫外線は2%と、生活環境因子が95%を占めているのです。つまり「がんにかかるのは偶然」なのです。

 ところでシエラレオネ共和国という国をご存知でしょうか?アフリカ北西部にある国ですが、国民の平均寿命が世界で最も短いことで有名です。年によって違いますが国民平均寿命は50歳前後。でもアフリカの北西部では、平均寿命50歳そこそこという国が他にもたくさんあります。

 昔の話ではありません。いま現実に、この瞬間、地球の裏側で起こっていることです。その原因は、たび重なる「内戦」「飢餓」そして「エイズ」の3つ。シエラレオネで生まれた子供の4人に1人は、5歳の誕生日を迎えることができません。

 かたや日本人の平均寿命ときたら、女性で89歳、男性で81歳。もうずっと世界トップ級の、とんでもない長寿の国です。今の日本の医療体制だと、心筋梗塞や脳卒中ではまず死にません。20年前だったらそのままあの世行きだった人が、すぐ退院して普通にバリバリ働いている。金持ちであろうがなかろうが、健康保険証さえ持っていれば、世界最高水準の医療を受けることができる。そんな国、日本以外ありません。

 つまり、日本人がとんでもない長寿だから、長生きすればするほど「がんにかかる」という「偶然」に当たる確率も増える。日本人の2人に1人はがん、というのは、ただそれだけのことなんですね。

 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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