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ドラマ「大恋愛」は貴重なドラマ 若年性認知症の問題点とは

 「町医者の独り言=39=」

 戸田恵梨香さんのドラマ「大恋愛」を拝見しています。兵庫県にゆかりのある女優さんで以前から親近感を持っているのですが、今回の「大恋愛」を見るたびに、深く考えさせられました。

 若年性認知症。怖い言葉です。18歳から64歳までに発症し、現年齢が64歳以下の人が若年性認知症と定義されています。これまで、日本では全国規模の若年性認知症調査が2回実施され、それによると10年間で約1・5倍に増えています。年齢とともに有病率は上昇し、5歳年を取るごとに約2倍になる感じで上昇していきます。

 実は、認知症といっても様々な原因があります。若年性認知症の原因で最も多いのが、脳の血管が障害され、梗塞(こうそく)、出血によっておこる脳血管性認知症です。次に多いのが、脳の海馬という部分を中心に萎縮がみられるアルツハイマー型認知症とされています。今回のドラマの症例です。アメリカでは、日本の2~5倍、イギリスでは、2倍、オーストラリアでは3倍の有病率とされています。

 若年性認知症は女性よりも男性が多く、患者さん自身がいわゆる現役世代であることが多いため、この病気になった場合、様々な問題が起きてきます。症状が進行すると、就労の継続が困難になることがあります。その家の経済状態が一気に困窮に陥り、場合によっては生活が立ち行かなくなることもありえます。

 若年性認知症の認知度は今回のドラマで随分と高くなったと思われますが、まだ一般的には低いはずです。そのために必要な情報やサービスを受け取れずに、社会から孤立無援になってしまうこともありえました。現在は、国、都道府県の事業として、若年性認知症に対する様々な支援が提供されていますが、それでも、まだ十分と言える状況ではないようです。

 認知症の薬は開発が進んでいて、症状の進行抑制が可能となっていますが、薬の効果には個人差が大きく、全体的に言えば治療効果は芳しくないと言わざるを得ません。また、病が進行すれば食事摂取が困難になったり、尿、便失禁などを認めることもあり、テレビなどで描かれる“美談”で収まることは現実的には厳しいと思われます。社会的、医学的にも、まだまだ課題の多い疾患の一つなんです。

 高齢化社会はさらに進んでいきます。認知症は誰でも、いろいろな形でかかわりうる疾患なのです。実際、介護要因の1位は、これまで脳血管障害(脳卒中など)でしたが、最近は認知症になりました。対岸の火事ではないことを認識し、個人的にも対策を講じていかなければならないでしょう。今回のドラマは我々に、問題を提示してくれた貴重なドラマであると思います。

 ◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

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