低迷のチームに希望の光 プロ初完封勝利のロッテ・木村優人 吉井監督も熱い抱擁
希望の光だ。プロ初完封勝利で今季3勝目を挙げたロッテ・木村優人投手(20)だ。
大偉業の夢はかなわなかったが、7回1死までパーフェクトピッチイング。その後も安定感のある投球で8回まで2安打無失点の好投だったが、球数は100球を超えていた。おそらく最終回は投手交代だろうと思いながら、私はスコアボードを見ていた。すると、ベンチからグラブを手にした木村が出てきて再びキャッチボールを始め、スタンドから拍手と歓声が上がった。
先発投手は通常、味方の攻撃中はベンチ横のファウルグラウンドでキャッチボールを行い、次の回のマウンドに備える。ベンチから出てきてキャッチボールするということは、最終回も投げるということ。つまり続投を意味する。ベンチ寄りのカメラ席で撮影していた私は、ファインダー越しに、輝く新星を見る思いだった。
最終回もヒットこそ許したが、球威のある最速152キロのストレートで打者を圧倒し9回3安打無失点。バッテリーを組んだ佐藤捕手と抱き合い、幼さの残る笑顔でナインとタッチを交わした。そして私はベンチ前で出迎える吉井監督とのツーショットを狙ってレンズを向けた。いつもは活躍した選手の頭をポンと軽くたたいて祝福する吉井監督だが、この日は違った。笑顔で握手を交わし、まるで優勝したかのように抱き合った。負ければ最下位が確定する試合で、志願の続投で完封勝利を挙げた若手右腕は、“希望”そのものだったにちがいない。
令和の怪物の抜けた穴は予想以上に大きかったが、新人王争いに名乗りを上げるドラフト1位ルーキーの西川をはじめ、一発が魅力の山本や打撃センス抜群の寺地などの台頭もあり、最下位に低迷しながらもチームの若返りを感じたシーズンとなった。そんな中で我こそはといわんばかりの快投を見せた高卒2年目の右腕。まさにチームを救う、希望の光だ。(デイリースポーツ・開出牧)





