【野球】「後ろから見てるとバットの軌道が…」振り子打法の謎を本人に直撃 元広島の秀二さんが語る最強の左打者
広島の正捕手として活躍した西山秀二さん(59)が、マスク越しに見たすごい打者とは一体、誰なのか-。これまでの回で、最強の右打者に落合博満氏を挙げ、落合さんの「左打者版」として広島、阪神で活躍した金本知憲氏、元広島の前田智徳氏を紹介してきたが、「独特の打撃」と評する最強左打者の1人がイチロー氏だ。振り子打法で日本球界を席巻したオリックス時代に受けた衝撃、さらに元巨人の2人の左打者、松井秀喜氏の圧倒的パワーと高橋由伸氏の天才打者ぶりを語った。
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「金本、前田とは違う対応ですごいなと思ったのは、やっぱりイチローですね」
安打製造機と呼ばれたオリックス時代のイチロー選手を西山さんは回想した。
プロ3年目の94年に1軍でレギュラーを奪取し、シーズン最多安打の210安打、打率・385で初の首位打者になったのを機に、7年連続首位打者、史上最速1000安打など数々の記録を塗り替えた。2001年のメジャー移籍後はさらに活躍を続け、25年にアジア人として初めて米野球殿堂入りを果たしたのは記憶に新しい。
イチロー選手の代名詞と言われたのが投手側の足を振り子のように使って打つ「振り子打法」だ。当時、広島の正捕手としてオープン戦などで対戦した西山さんは、独特の打撃に戸惑わされたという。
「普通のバッターを見ている感覚で、空振りに取ったと思うフォークボールを捉えられる。体の動きは、通常なら空振りを取ったところへ入ってるけど、実際にバットだけはフォークが一番落ちたところに出てくる。だから後ろから見てると、バットの軌道が変わったように見えるんですよ」
西山さんは直接、イチロー氏に感覚のズレがなぜ生じるのか疑問をぶつけたことがあるという。
「話す機会があった時に、マスク越しに見て不思議やと思うんやけど、と聞いたら、“グリップだけは絶対に前に出したらダメなんです、トップの位置に置いたまま、これで間に合わないという最後のところまで引きつけて、バットを出すんです”と言ってたんです」
イチロー氏が語った打撃の原理を基に西山さんは解説を続けた。
「振り子打法は動きが大きくて、前で打ってるイメージがある。でも彼の場合、体はいつでもバットを出せるように入っていきながら、バットが出ていく位置だけは、20センチぐらい後ろのポイントへ向かって入っていく。だから、実際の動きとバットの軌道が全然違うんです」
懐に引きつける20センチが生み出す独特のバット軌道を、西山さんはこんな風に表現した。
「誘導ミサイルみたいな感じ。ボールが動いた方へバットがついていって、芯が入っていく。彼独特の打撃ですよね。だからあれだけのヒットを打てるんでしょうね」
その対応力に改めて感嘆の声を上げた。
西山さんは、日本球界からメジャーへ移籍して活躍したもう一人の左のスラッガーの名前も挙げた。
巨人での10年間で、首位打者1回、本塁打王3回、打点王3回のタイトルを獲得し、ヤンキース時代にはワールドシリーズMVPを受賞。日米通算で507本塁打を記録した松井秀喜氏だ。
「もう芯で打たれたら、ほぼホームランやから。やっぱり圧倒的なパワーでしたね」
松井氏のインパクトの瞬間にバットが焦げた匂いがしたと証言した審判員がいたが、西山さんの記憶に刻まれているのは音だった。
「バットが当たった瞬間、木のバットなのに、金属バットのような音がする時があった。やっぱりそれだけ、衝撃が強いんだと思います。市民球場で紀藤(真琴)さんとバッテリーを組んで、場外ホームランを打たれた時の音は、耳に残ってますね。一生忘れない。後にも先にもあんな音は、彼だけですね」
96年8月27日に広島市民球場の右翼スタンドを越えていった驚弾を思い返した。
そしてもう1人、松井氏の後輩で、巨人一筋に18年間プレーし、卓越した打撃技術を誇った左打者、高橋由伸選手の名前を挙げた。
「低めの変化球は結構空振りを取れたけど、ベルトから上へ球がいったら、球種は関係なく、ほとんどスタンドへ持っていかれた。由伸は天才打者だった。ちょっと抜けて高いところに行ったら全部、ホームランにされましたからね」
手痛い一発を幾度となく浴びせられたことを振り返った。
(デイリースポーツ・若林みどり)
西山秀二(にしやま・しゅうじ)1967年7月7日生まれ。大阪府出身。上宮高から1985年のドラフト4位で南海に入団。87年のシーズン途中で広島にトレード移籍。93年に正捕手となり94、96年にはベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞。広島の捕手として初めて規定打席に到達して打率3割をマーク。2005年に巨人に移籍し、その年に引退。プロ在籍20年で通算1216試合、打率・242、50本塁打、36盗塁。巨人、中日でバッテリーコーチを務めた。
