【野球】東大の“東大流”改革とは 東六で9年ぶり勝ち点 部員約160人率いる大久保監督「時々『やばいぞ』って思わせる戦いを」
東京六大学野球の東大が今春リーグ戦で法大に連勝し、2017年秋以来、9年ぶりの勝ち点を挙げた。春季リーグの勝ち点は1997年の立大戦以来、29年ぶり。野球強豪校出身者が多く活躍する同リーグで奮闘する“東大流”の改革とは-。23年11月からチームを率いる大久保裕監督(68)への取材から躍進の背景に迫る。
東大は5月9、10日の法大戦で久しぶりの勝ち点を獲得した。投手戦となった1回戦はエース左腕・松本慎之介(3年・国学院久我山)が投げきって勝利。乱打戦の2回戦は野手陣が奮起し、投手陣が粘って連勝した。大久保監督は「“全て”うまくいった勝ちだった」と振り返る。
今季、最も改革の成果が出たのは「打」だった。3年前からチームを指導するトレーニングコーチの提案でこの冬は肉体改造を実施した。東京六大学所属選手の身長と体重を元に各大学のBMI数値を算出。他大学に比べて東大はBMIが低かったため「六大学で戦えるレベルに上げないと」と食事やトレーニングで筋肉量と体重アップを図った。
さらに昨年からチームの臨時打撃コーチを務める元ヤクルト外野手・荒井幸雄氏と栗山彰恭氏の指導も結果につながっている。荒井氏は経験を元にした技術や練習方法を指導し、栗山氏は体の使い方を教えるなど打撃アナリストとしての役割を担う。今年3月のキャンプではランチ特打を取り入れ打撃力向上につなげた。
その上でVR(バーチャル・リアリティー)の活用も積極化している。3年前の使用当初は精度が低かったが、昨年からは「六大学のトラックマンと映像データを組み合わせて、投手の球種などもVRが再現して」と、よりリアルで本格的に六大学の投手と“対戦”ができる。これらの打撃改革で今春は3本塁打を記録するなどチーム全体として長打が増えた。
「守」は地道な努力の積み重ねだった。監督就任時にまずキャッチボールの精度を上げるため30秒で何回往復できるかをカウント。投手はラプソードデータで回転数や回転軸を数値化するなど、データをフル活用して数字で感覚の意識付けを行った。
「走」については「(他大学で)一番足が速い選手も(東大生と)さほど差はない。だからそこは何とか生かしたい」と打順は1番と2番に足の速い選手を置き、常に足を絡めた攻撃を意識してきたことが奏功した。
現在、東大の部員は約160人。マネジャーと学生トレーナー、アナリストは計34人と過去最多だ。部員が増え続ける理由を「野球が好きでいちずな生徒が多い」と大久保監督は話す。外部コーチの招聘(しょうへい)やVRの導入は部員やOBが率先して提案。指揮官は生徒の野球への純粋な思いに応える柔軟な受け入れを心がけている。
高校までの野球の実績では、他大学に及ばない。それでも野球がうまくなりたい思いから“東大流”で向上に努める。東大出身の大久保監督も思いは同じだ。「時々、他大学に『やばいぞ』って思わせる戦いをしないといけない」。今春リーグ戦は29年ぶりの最下位脱出とはいかなかったが、進化し続ける東大から目が離せない。(デイリースポーツ・和泉玲香)
