【野球】低反発バット導入で増えるトリックプレー 変わりゆく高校野球の得点パターン 準々決勝までの本塁打は3本と激減

 今年のセンバツを見て思うのは、偽装スクイズ、またはそれに似た作戦を講じるチームが多いということだ。

 そもそも偽装スクイズとは、無死または1死の走者一、三塁の場面で、打者が投球に対してスクイズを試みたように見せかけて故意に空振りし、捕手が三塁走者の離塁、飛び出しの大きさを確認する時間を稼ぐ間に、一塁走者が二塁を陥れるという作戦だ。

 単純に一塁走者が二塁へ走る盗塁のサインであれば、仮に打者がスイングして空振りしたとしても、捕手は三塁走者の動きを視界に捉えつつ、二塁に送球することが可能。その点、偽装スクイズにおいては、守備側に打者がスクイズを失敗したという錯覚を抱かせることで、捕手に三塁走者を刺せるのではないかというコンマ数秒の時間が生まれ、一塁走者に猶予を与えることができるのだ。

 28日の準々決勝、報徳学園-大阪桐蔭戦でもあった。報徳学園が1点差に迫られた直後の八回1死一、三塁。初球で打者・西村がヒッティングの構えから投手に向かって正対し、スクイズを試みるような姿勢を取った。西村は横にしたバットのヘッドを下に向ける形でボールを見送り(スイングは取られず)、一塁走者は二塁へスタートを起こした。捕手が三塁走者の動きを確認する時間は極めて短いものだったが、二塁に送球することはできなかった。好機を広げて2点を奪い、リードを広げた。

 今大会から飛ばないとされる低反発バットが導入されたこともあり、準々決勝を終えた時点での本塁打数は3本(うち1本はランニング本塁打)。昨年が12本、一昨年は18本を記録していたが、今年は各チームの外野が比較的浅い守備位置を敷く場面も目立つ。

 これまでより、打って点が入りにくくなる野球に移り変わることで、攻撃側は今までより細かい野球を仕掛けてくる。一、三塁の場面で一塁走者が盗塁を仕掛け、故意に一、二塁間で転んだように見せかけることで捕手の送球を誘い、その間に三塁走者が本塁を奪うなど、スクイズ、セーフティースクイズとはひと味違う点の取り方も増えてきている。

 投手のケガを未然に防止するという観点から導入された低反発バット。本塁打数や長打が減ったことで魅力も減ったという声を耳にするが、これまでにレアとされてきた得点シーンが今後増えていくという魅力もある。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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