【野球】FA制度見直しの現在地とは 人的補償継続ならプロテクト増、Bランク廃止を推す声 撤廃ならドラフト指名権譲渡か

 NPBがFA制度の本格的な見直しを検討している
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 NPB(日本野球機構)が、本格的な見直しを検討している現行のフリーエージェント(FA)制度。取得年数の短縮や、撤廃も選択肢に入っている国内FA移籍の人的補償など多くのクリアすべき課題がある。NPBが新たな移籍制度の構築に向けて動く中、現状を整理した。

 30年以上続いてきたプロ野球のFA制度が、歴史的なターニングポイントを迎えている。昨年12月の選手会総会で選手会側が新たな移籍制度の設立を目指すと決議。NPBでも昨年からFA制度の見直しへ具体的な検討を行ってきた。現時点での議論ついてNPB関係者は「FA権取得年数の短縮がメイン」と明かす。

 現行の制度は国内FA権は8年、07年以降のドラフト会議で入団した大学、社会人出身の選手は7年。選手会は海外FA権(9年)も含めて一律で6年を要望しているが、現実的なのは「各カテゴリーで1年短縮」(NPB関係者)。大学、社会人出身は6年、高校出身は7年。ただ短縮の場合には、現行規定で1シーズン145日の取得日数を増やす案が検討課題に挙がる。海外FA権の短縮は現在議論に含まれてないという。

 今後、本格的に検討が進んでいく中で“焦点”となるのが人的補償の問題だ。

 オフに西武から国内FAでソフトバンクに移籍した山川の人的補償を巡って騒動があり、NPBでは人的補償の撤廃も選択肢に挙がっている。撤廃した場合の代替案として有力なのは、「ドラフト指名権譲渡」と複数の球界関係者が声をそろえる。

 米大リーグで既に導入されている制度で、FA選手の獲得球団が旧所属球団にドラフト指名権を譲渡するものだが、問題点もいくつかある。

 例えば、24年オフにFA選手を獲得した球団から旧所属球団に譲渡される指名権を行使できるのは、25年秋のドラフト会議。指名した新人選手が実際にプレーできるのは26年シーズンになる。人的補償なら25年シーズンから獲得選手が戦力になるが、ドラフト指名権譲渡の場合は1シーズンの「空白」が生じる。

 また、仮に1位の指名権譲渡なら、FA獲得球団は翌年の“ドラ1”がいなくなる。ファンの感情も考慮するならば、2位の指名権譲渡が妥当では、という意見も挙がっている。

 人的補償を継続する場合はどうか。対象から除外されるプロテクト28人の数を増やす案が取りざたされている一方で、Bランクの人的補償撤廃案を推す声もある。

 人的補償が発生するのは、所属球団の外国人選手を除く年俸Aランク(1~3位)とBランク(4~10位)の選手。近年は人的補償が必要ないCランクの選手に人気が集中し、Bランク以上の選手は敬遠される傾向がある。Bランクの人的補償も撤廃すれば、FA移籍が活発化する可能性は十分にあるだろう。

 各球団にはそれぞれの主張や事情があり、それは選手会も同様だ。いずれにせよ時代に合って、ファンも含めて全員が納得できるようなFA制度の構築が理想。NPB、12球団、選手会。交渉の“落としどころ”に注目したい。(デイリースポーツ・伊藤玄門)

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