【サッカー】名門クラブをJ1に導いた22歳の救世主 新生東京ヴェルディへの思い語る 染野唯月「成長できるチーム」

 今季16年ぶりにJ1で戦う東京V。初代J王者に輝くなど、Jリーグ創設期に輝きを見せた名門クラブの帰還に、心を躍らせるサポーターも多いだろう。新しくなったチームで注目を集めるのは、昨年12月の昇格プレーオフの清水戦で、1-1に追いつく同点のPKを決めたのがFW染野唯月(22)だ。J1に導いた救世主が語る熱い思いとは。

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 5万人超の観衆が詰めかけた国立競技場で、地鳴りのような歓声が鳴り響いた。引き分け以上でJ1昇格が決まる一戦。1点リードされて迎えた後半ロスタイム、染野が相手DFに倒されPKを獲得した。決めればJ1昇格、外せばJ2残留。天国か地獄か、クラブの命運が託される場面にも「絶対、自分が蹴ろうと思った。そこは譲れなかった」と自ら名乗り出た。想像すらできないような重圧にも動じることはない強心臓ぶりを発揮。無我夢中で蹴ったシュートはゴールネット右に突き刺さり、16年間の“呪縛”から解き放つ一撃となった。「自分を温かく受け入れてくれたヴェルディに恩返しできたのが一番うれしかった」と振り返る。

 今季の東京Vは、選手の平均年齢が24・1歳とJ1で最も若いチーム。オフには15人の新加入選手を獲得したが、実績のあるベテランや外国籍選手を迎え入れなかった。戦力不足を指摘する声もある中、22歳のストライカーは「いろんな成長ができるチーム」と無限の可能性を示唆する。「J1で試合をしたら相当学べることがあると思う。今季、ヴェルディの中ではいろんな発見ができて、それを自分のものにして成長して各選手がいろんなバリエーションを発揮できる選手になる」と新たな黄金時代への通過点と位置づけた。

 22年、昨年と鹿島から2度の期限付き移籍で東京Vに加入。J1クラブとのギャップが目に入ることもあった。「(鹿島と)比べるわけじゃないですけど、スタジアムの席が空いていたりしていた」。城福浩監督も「味スタ(味の素スタジアム)前の信号で止まっている間、前にある遊歩道を1人も通らなかったことに驚いた」と明かす。かつては全国区の人気クラブだったものの、J2で低迷している間にサポーターが離れているのは事実だった。そんな中、16年ぶりの昇格が見えてきた昨年終盤はスタジアム、遊歩道ともに徐々に活気を取り戻し、新しいヴェルディに興味を持つ人が増えたと感じたという。染野は「やっぱりうれしい。それがJ1に上がって、もっと増えてくれたら自分たちにとっても後押しになる」と期待を込めた。

 今季は個人として、2桁得点を目標に掲げ、昨季の6得点(18試合)からの飛躍を誓う。パリ五輪世代だけに、U-23日本代表入りについても「ヴェルディで結果を残せば、自然とつながってくると思う」と意欲を見せる。25日の開幕戦(国立競技場)の相手はJリーグ発足の31年前と同カードとなる横浜M。まだ生まれる前の出来事だ。「正直あまり分からないですけど、強いヴェルディの時代でしたし、本当に注目はされるだろうなっていう印象はあります」と歴史の重みは理解している。一方で「自分たちがやりたいサッカーをやる」と当時のファンにも、ありのままの姿を見せつけるつもりだ。新生・東京Vのシンボルとなる救世主が、新時代の開拓者としてチームを引っ張っていく。(デイリースポーツ・松田和城)

 ◆染野唯月(そめの・いつき)2001年9月12日生まれ、22歳。茨城県出身。181センチ、73キロ。利き足は右。5歳から兄の影響でサッカーを始める。福島・尚志高2年時の全国高校サッカー選手権大会では5得点を挙げ得点王に輝いた。20年に鹿島に入団。22年途中に東京Vへ期限付き移籍。23年に鹿島へ復帰も、シーズン途中から再び東京Vに期限付き移籍。リーグ戦通算72試合出場、11得点。昨年9月に結婚。趣味はゴルフ・旅行。愛称は「そめ」。

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