【野球】三冠王・村上に死角はあるのか「一筋縄で抑えられる選手ではなくなってきている」攻略法を探る

 ヤクルト・村上
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 昨年、シーズン最終戦の最終打席で王貞治が持っていた日本選手のシーズン最多本塁打記録を破る56本塁打をマークし、史上最年少で三冠王に輝いたヤクルト・村上宗隆内野手。22歳にして、向かうところ敵なしを思わせる豪快かつクレバーな打撃。2年連続三冠王とリーグ3連覇を狙う今季、この強打者に死角は存在するのだろうか。

 阪神、オリックスでコーチを務めた岡義朗氏は「年々、一筋縄で抑えられる選手ではなくなってきている」と急角度を辿る村上の成長曲線に驚きを隠せない。加えて「(自らの感覚的な)ゾーンに入った時の勝負強さは球界随一じゃないか」と納得顔だ。

 昨年は141試合に出場して、打率・318、56本塁打、134打点。打率2位は中日・大島で4厘差。本塁打2位は巨人・岡本和で26本差。打点2位はDeNA・牧で47打点差。この数字を見ると、2年連続三冠王に向けた最大の障壁は打率部門になるのではないかと思われる。

 本塁打と打点は打てば上積みされる一方だが、打率は打てない期間が長くなればなるほど、数字がどんどん下がっていく怖さがある。打撃3部門では唯一特性の異なるタイトルとも言える。

 「村上と言えども一人の人間。本塁打記録更新がかかっていた昨年の最終盤には、シーズン半ばまでには見られなかった力みや不振があった。だから少なからずの穴であり、攻略法はそこから見いだせるはずだよ」と岡氏は指摘する。

 ストライクゾーン9分割における村上の打率を記す。

 内角高め・286

 内角真ん中・385

 内角低め・333

 真ん中高め・357

 ド真ん中・370

 真ん中低め・538

 外角高め・250

 外角真ん中・434

 外角低め・313

(データは共同通信デジタル)

 データ上、昨季一番苦手としたのは外角高めで打率・250。さらに内角高め・286、外角低め・313と続く。4度に1度は安打にする・250を「苦手」と表記するのは語弊があるかもしれないが、村上の中で一番数字が出ていない昨季0本塁打のゾーンであることは事実だ。

 「抑えるための基本線は、アウトローにいかに正確に投げ込めるかだろうね。村上だけでなく、誰しもが基本的に得意としていないゾーンだから。ただ、村上の場合、アウトローでも打率・313の数字を残している。さすがというほかない」と岡氏は語り、こう続けた。

 次善の策。「アウトローとインハイ。対角線への投げ分けだね。投球に対して踏み込ませない、踏み込みを甘くさせるために。アウトロー一辺倒では間違いなく打たれる。投げミスの確率を減らし、ミスショットを誘うためには、この対角をうまく使うかにかかってくると思う」と説明した。

 ただ、岡氏は村上クラスになると、配球の偏りは命取りになると指摘し、期間を区切った大胆な“球の配置”が重要になってくるとも位置づけた。

 「まず考えなきゃいけないのは、昨年の対戦を踏まえた上で、今年1年間どう戦っていくのかということ。手がつけられない時にまともに勝負していたら、去年と同じ結果になるから、歩かし(四球)OKの勝負も必要になる。村上の調子を踏まえながら、その時その時に合った勝負をしないといけない」とした。

 岡氏は村上を「1年間トータルで考えないと抑えられない選手」と考える。そこで「1試合、3連戦、1カ月、1年という区切りを設けながら対処していく。時に大胆な配球も交えながら。もちろん、そこには昨年の対戦データ、今の村上の調子などを加味しながら。複合的な要素を組み合わせて編み出した配球が、ひとつの答えとなって村上を封じるという結果につながることになる」との結論を導き出した。

 某セ・リーグ球団の投手コーチは昨季の村上の好調時を振り返り、「あの時はどこに投げても打たれそうな気がしたし、実際に打たれた。投げてる投手が打たれそう、打たれると感じながら投げてる部分もあった。打席内から醸し出す、あの年齢では考えられない強いオーラみたいなものに投手が対戦前から負けていた」と述懐した。

 どの球団にとっても、村上との勝負を通らずしてリーグ優勝に近づく道はない。逃げるが勝ちという時もあれば、真っ向勝負で打ち砕かれること、もちろん正々堂々と封じ込める時もあるだろう。知恵と技術とデータでいかに“天敵”を眠らせられるか。その一方、球史に名を刻んだスラッガーが包囲網をかいくぐり、見る者を魅了する豪快なアーチを今年は何本たたき込むのか。興味は尽きない。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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