【野球】阪神・谷川昌希、両親の願いに応えたプロ初勝利

 たった17球でつかんだ。プロ初勝利-。それでも価値ある1回0封だった。

 神様、仏様…。思わず両手を握った。6月2日の西武戦(メットライフドーム)。谷川のプロ2度目の登板だった。母・貴子さんは、息子が作ったピンチを目の当たりにし、目を閉じる。最後は信じ、ひたすら祈っていた。

 本来は、1日からのウエスタン・ソフトバンク戦でリリーフ登板する予定だった。福岡県出身の谷川にとって、2度目となる地元凱旋。だからこそ、両親は2軍戦のチケットを購入していた。それでもその矢先に決まった中継ぎとしての一軍再昇格。母の思いは一つだった。

 「たとえ投げなくても、同じ場所にいられるだけでいい」

 福岡から遠く離れた埼玉へ。急な話な上に、移動総時間も5、6時間だ。そんな中、父が断を下した。「埼玉、いこうか」。その言葉に後押しされ、駆けつけると…最高の景色を見ることができた。

 谷川の出番は2点ビハインドの五回。先頭の山川に「反省したい」と振り返る初球を左前にはじき返されると、その後2四球で2死満塁。大ピンチを背負うが、最後はバウンドの高い二ゴロで、俊足・金子侑を間一髪でアウトにした。同級生の二塁手・糸原にも助けられ無失点。それでもピンチの芽を摘み取り、ビックイニングを呼ぶ攻撃へとつなげた。

 偶然なのか、必然なのか-。節目の時には、必ず駆けつけていた。緊急で決まった5月10日のプロ初先発。平日なのにもかかわらず、仕事先に都合をつけると、飛行機に飛び乗り駆けつけた。初黒星こそ喫したが、巨人打線に立ち向かう息子の姿を見つめた。

 兄の影響で野球をはじめ、すくすく成長した次男坊の昌希。子どもの頃から明るく、いつも力をもらっていたという。「子どもの頃からひきずらない、くよくよもしない、いつもにこにこ笑っていましたから。私が仕事から疲れて帰ってもいつも笑顔で迎えてくれて…。とてもありがたかったんですよね」。小さい頃からかわいい笑顔に励まされ、またしても力投後に見せたその笑顔に癒やされた。

 「生きた心地がしなかった」という息子の晴れ舞台。それでも、大歓声を浴びながらピンチをしのぐ姿は格別だった。「今から祝杯あげます!!」。声が自然と弾む。両親の願いに応えた息子から、今度は最高のプレゼントが贈られる予定だ。プロ野球選手として初めて手にした記念球、ウイニングボールが。(デイリースポーツ・松井美里)

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