サブマリンの「フロントドア」渡辺俊介

 日本のプロ野球が開幕。注目を集めるのは、やはり8年ぶりに日本球界へ復帰した広島・黒田博樹だろう。

 フォーシームを主体に力で押していた以前の広島在籍時と違い、いまや黒田の代名詞は左打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンへ入れてくるツーシーム。いわゆる「フロントドア」だ。

 ヤンキースへ移籍した田中将大も本格的に取り入れ、日本球界でもブームとなりそうな「フロントドア」だが、取り入れたのは本格派投手だけではない。

 米独立リーグのランカスターで2年目を迎える元ロッテのサブマリン・渡辺俊介も、異国での野球に順応するために投球スタイルを変化させた。その1つが「フロントドア」だ。

 ロッテ時代はシンカー(ツーシームと同様の軌道を描く)を左打者の外角へ逃げ、打たせて取る球として活用してきたが、左打者の内角へ、日本ではなかった形で用いている。

 「とにかくアメリカの打者は踏み込んで打ちに来るんです。外へ逃げる球だけは捉えられてしまう。そこで有効的だったのが、シンカーを左打者の内角へ投げる『フロントドア』でしたね」

 打者の意表を突いてカウントを稼ぐ。左打者に踏み込ませず打たせて取る。活用法次第で、球数を少なくすることもできる球だ。

 ただ、球速や球威で勝負するタイプではない渡辺にはプラスαの要素も必要。大きいな違いは勝負するゾーンと打者の目の錯覚。新たなスタイルの鍵だ。

 ロッテ時代は下手から低めに集めてゴロを打たせるタイプだったが、今は高めでフライを打たせるスタイルへと変貌を遂げている。

 「外国の打者、特に中南米の選手は低めを打つのがとにかくうまい。低めに集めてもうまく拾われる。だから高めで勝負するスタイルになってきました」

 シンカー以外で使う主な変化球も、日本時代のカーブからスライダーが多くなった。

 「スライダーの方が、カーブよりも打者には浮き上がって見える。下手からホップする感じです。実際にはホップはしないんですけどね。直球などとの組み合わせで、打者にそう錯覚させるんです」

 上手投げの投手とは逆の、下からの角度をつける配球を模索してきた。海外のリーグで生き残るためにたどり着いた新たな形だ。

 ランカスターが所属するアトランティック・リーグは23日(日本時間24日)に開幕。所属球団の中には試合を動画配信しているサイトもある。ロッテ時代からのファンの方は、サブマリンの「フロントドア」をライブ映像で見てみるのも、また面白いかもしれない。(デイリースポーツ・中田康博)

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