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龍谷大平安「野球センスは作れる」

逆立ちをしながら前進する龍谷大平安ナイン=龍谷大平安ボールパーク(撮影・山口 登)
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 野球センスは作れる-。センバツ連覇を目指す龍谷大平安には、23年に渡って培ってきた練習法がある。“日本一のウオーミングアップ”。高校野球関係者の間でこう評されてきた準備運動が昨年末、DVD化された。実際に見てみると確かに、その概念を越えている。

 センタリングという体の軸と体幹を意識したスクワットに始まり、ストレッチ、倒立、ブリッジウォーク、クモ歩き、ほふく前進などを次々と消化。選手たちは約1時間で32種類のメニューをこなす間、腰に手を当て、何度も白い息を吐いた。端から見ていても十分に“きつい”メニューだが、原田監督は「これは体調面を考えてショートバージョンです」と顔色一つ変えずに言う。

 他に縄跳びや空き缶を使う“遊び”を重視したメニューもあり、その数は約2000種目以上。原田監督が同校に着任し、2年目から、トレーニングコーチと相談して色んな種目を取り入れてきた。そこから選手の状態、実力に合わせて冬場で2時間半、シーズン中で1時間のウオーミングアップを実践。単なる準備運動だけでなく、強化する要素も取り入れた練習法のポイントは「まだ身長が伸びている選手もいる。成長を続ける高校生に何が必要か。体幹を強化し、柔軟性と関節の可動域を確保することに重点を置いて」と同監督は明かす。

 それは一つの“教訓”から生まれた。原田監督が社会人・日本新薬で外野手としてプレーしていた際、スピードはあったもののパワー不足に悩まされた。そこで本格的にウエートトレに着手。鋼のような肉体を手に入れ、自然と打球も飛ぶようになった。

 その一方で関節の可動域は狭まり、柔軟性が失われたことで故障が頻発。結果として選手寿命を短くすることにつながった。「野球は高校の3年間だけではない。生徒には大学、社会人、プロと少しでも長く野球を続けてほしい」。それが日本一のウオーミングアップが誕生する“きっかけ”となった。

 龍谷大平安では全体メニューにウエートトレを導入していない。練習後に個人で取り組む選手はいるものの「基本的には自重(自分の体重)で十分と判断している」と、パワーアップには腕立て伏せなど重りを用いず強化に取り組んでいる。もちろんウエートトレを完全否定するわけではなく「身長が止まって大学、社会人で色づけしていけばいい」。高校生の間は体の“基礎”を作ることに重点を置いている。

 さらに近年、小学校の体育の授業でマット運動や跳び箱を導入しない学校が増えた。「どう体を使っていいのか分からない選手が多い。ブリッジウォークにしても、どうすれば真っすぐ進むのか。赤ちゃんは寝返りやハイハイから体の使い方を学ぶ。そこまで掘り下げて、一から体の使い方を知ることで能力アップにつながる」。一般的に野球センスは頭で描いたイメージ通りに体を動かすことができるか否かと言われている。

 選手が指示を正確に理解し、多種多様な強化運動をイメージ通りに実践する訓練を積んでいけば「野球センスは作れる」と原田監督は力を込めた。だからこそきちんとできない選手は、できるまでやらせる。他の選手が次のメニューへ移行しても、隊列から離して同じメニューを繰り返させる。

 「新入生がすべてこなせるようになるまで3カ月はかかる」。技術練習の前段階で遅れれば、自ずとライバルとの差は開く。競争意識を植え付けることで、成長や向上心を促すことも可能だ。

 今春のセンバツ出場が決まり、決勝まで進出すれば史上2校目の春夏通算100勝に到達する龍谷大平安。23年、取捨選択を繰り返しながら作り上げられた“日本一のウオーミングアップ”。伝統の練習法が、強豪校の確かな礎となっている。(デイリースポーツ・重松健三)

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