松山英樹「変わった」転機の地で金獲りへ コロナ感染で急ピッチ仕上げも覚悟決める

 「東京五輪・ゴルフ男子」(29日開幕、霞ケ関CC=パー71)

 松山英樹がマスターズ王者として優勝に挑む。会場の霞ケ関CCは「自分が変わった場所」と呼ぶ転機の地。2010年10月にアジア・アマチュア選手権を制し、18歳でマスターズ・トーナメントへの出場権をつかんだコースだからだ。

 11年4月、初出場でベストアマチュアに輝いたが、そこへの道には葛藤があった。胸躍るはずの出発前、在学中の東北福祉大がある仙台市を東日本大震災が襲った。「こんな時にゴルフなんて」と辞退を考えた時、激励の声を多くもらった。電子メールを印刷し、分厚い束を大事にバッグに詰め込んで海を渡った。

 ことし春、ちょうど10度目の挑戦で勝者の証しとなるグリーンジャケットに袖を通した。「あの時送り出してくれた東北、日本の皆さんのおかげ」と感謝を忘れたことは一瞬もない。

 今大会前も困難に直面した。2日、新型コロナウイルス感染が判明。検査の数値が悪く、出場できるのか不安がよぎったという。納得いくまで振り込む練習の虫が、クラブさえ握れない日々を過ごした。

 コロナが影を落とす世の中を明るくしたい。そう自らを奮い立たせ、日本男子初のメジャー王者として、母国開催の祭典のティーに立つ。「いい成績を出し、ここでまた変われたらな」と思いを込めた。急ピッチの仕上げで不安は残るが「気持ちでカバーしていけたら」と覚悟を決めた。狙うはただ一つ金色のメダルだけ。その輝きで支えてくれた人、苦しむ人の心を少しでも照らしたいと願う。

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