張本智和 苦難五輪デビュー アクシデントのちチョレイ 前日深夜の日時変更なんの
「東京五輪・卓球男子シングルス・3回戦」(26日、東京体育館)
男子の第3シード張本智和(18)=木下グループ=は林兆恒(香港)を4-1で、女子の第5シード石川佳純(28)=全農=はオラワン(タイ)を4-2でそれぞれ退け、ともに4回戦に進んだ。張本は試合の日時が急きょ変更されるなどのアクシデントがあったが、3ゲームがデュースという苦しい試合を制して五輪デビューを勝利で飾った。
五輪の神様は、あまりに意地悪だった。すっかり大人びたとはいえ、男子のエースはまだ18歳。「自分の中で五輪という意識が強くあって緊張した」と、ただでさえ自分を見失う初五輪で、まさかの事態が起こっていた。
この試合は当初、27日午前10時開始予定だったが、前日に26日午後3時半に急きょ変更されていた。しかも、本人や男子の倉嶋洋介監督への連絡はなく、張本は25日午後8時頃に協会関係者からの連絡で確認。倉嶋監督は混合ダブルスが終わった後の午後11時頃に、競技日程のサイトで更新に気づいたという。
張本は「正直びっくりした。(試合が)決まるのが夜遅いことはあるけど、決まってから変更されたのは初めて」。試合前夜はラバーを張り替えようと考えていたが、一日前倒しになったことで、そのまま出場した。
何より精神的な動揺は否めなかった。「結構不安はあった。誰も(シングルスは)始まってないのに終わってしまうのかと思った」と思い詰めたが、「今日でも明日でもやるしかない」と最後は腹をくくったという。
男子の倉嶋洋介監督も「今までで一番仕上がりがよかった。いつでもいけると言っていたら、急に翌日になった」と驚きを隠せない。「初戦なのに心の準備ができずかわいそうだった。ここで変わるのはひどい」と本人の思いを代弁した。
試合では第2ゲームの中盤にバックハンドの際に台で手を擦り、右手甲から流血するアクシデントもあった。「今日を乗り越えていい流れにいけるか。すべてを準備したい」と張本。ひたすら前向きにとらえる強さが、大舞台の武器になる。