女子ツアーと男子ツアー 格差の理由

 女子ゴルフツアーにあって、男子ゴルフツアーにないものって何だろう。最近、こんなことをあれこれ考える。

 女子ツアーはツアー運営に不可欠なスポンサー獲得と人気の両面で好結果を出しているが、男子ツアーは下降線か下降してからの横ばいだ。

 では、女子に何があって、男子に何がないからそうなったのか。これまでにたくさんのご意見、分析があるだろう。私は女子ツアーには夢があるが、男子ツアーではそれがあまり表に出てこないし、むしろ生活の臭いが漂っている感じがするからではないかと思う。

 この面に限定して考えてみる。女子ツアーには夢があると言ったのは、年々若くてビジュアルのいい選手が増え、しかも生活のことを考えなくてもいい選手が多いので、取材をしていると、ほぼ全員が夢を語る。その一部を紹介しよう。

 「今年は何が何でも初優勝したい。初戦からぶっ飛ばしていきます」(香妻琴乃)

 「賞金女王になって、去年亡くなったお父さんとの約束を果たしたいです」(イ・ボミ)

 「年間10勝を狙います」(上田桃子)

 「まだ年間1勝しかしたことがないので、複数回優勝したい」(渡辺彩香)

 ひたむきに目標へ向かって全速力で突き進む。そういう感じがとてもよく伝わってくるではないか。もちろん、常に順風満帆ではないから、道の途中でカベにぶつかったり、くじけたり、悩んだりする。それがまた話題になる。努力してそのカベを越えれば、それもまた注目される。

 若い選手が一生懸命に飛躍や脱皮を目指す姿には、私たちも夢を見させてもらえるし、成功した瞬間には言葉にできないほどの感動がある。これは4年に1度、競技人生をかけて出場する五輪戦士に似ている。

 さらに女子ツアーでは、その主役たちが若くてビジュアルもいい女子プロたち。となれば世のゴルフファンが応援するのもうなずけるし、ゴルファーの大半を占める“おじさん族”が声援を送らないわけがない。

 対する国内男子ツアーはどうか。もちろん、海外で活躍する松山英樹や石川遼には、大きな夢が感じられる。だが、国内ツアーに目を向けると、開幕戦の東建コーポレーションカップで2位に入った山下和宏が「イップスが出なかったので、良かった」と語ったように、どこか生活臭が漂うのだ。

 青木功やジャンボ尾崎は往年の名選手であることは疑いようがないが、彼らのエージシュートが話題になるようでは、先行きが明るいとは言い難い。

 夢を口にする男子選手がいないわけではないし、数多くいると思う。ただ、そういう選手は国内でさえも活躍できず、表舞台に上がってこないのが現状だ。

 かつて最強アマチュア時代の宮里優作は、こう言い放った。「タイガーに勝ちたい。それも全盛期のね。衰えてからじゃ勝ってもうれしくないから」。この言葉を聞いたとき、私は鳥肌が立った。無性に感動したのを覚えている。

 見る者が選手に夢を見させてもらえるか、また、選手の夢をどれだけ共有させてもらえるか-女子ツアーと男子ツアーに格差ができた理由のひとつではないだろうか。

(デイリースポーツ・松本一之)

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