パナ田中史朗 自軍有利の判定に苦言

 「ラグビー・日本選手権 パナソニック49-15帝京大」(1月31日、秩父宮ラグビー場)

 パナソニックが2季ぶり5度目の日本一を果たした。トップリーグ3連覇中の地力を見せつけた形となったが、W杯代表メンバー・田中史朗(31)は「ありえないっていうぐらいジャッジミスがあった」「東芝戦と比べて盛り上がりはなかった」と判定や運営について、厳しい言葉を並べた。

 ジャッジミスの一例として田中が指摘したのは、前半26分、帝京大のWTB竹山晃暉(1年)が前に蹴り出しトライを狙ったシーンだった。守備に戻ったヒーナン・ダニエルが競り合いながら先にボールをキャッチ。その後、インゴールに倒れ込んだ。

 田中は「ヒーナンが(ボールを)取って中(インゴール)に入ったのに、なんで5メートルスクラムにならなかったのか。僕らの得だったんですけど、よく分からなかった」と振り返る。ヒーナンがボールを取ってからインゴールに入った場合は「キャリーバック」となり、帝京大ボールの5メートルスクラムとなる。しかし、判定は「ドロップアウト」。竹山の蹴ったボールがインゴールの中に入ってからヒーナンが押さえ込んだとして、パナソニックボールのドロップキックで試合は再開した。

 VTRを見直すと、確かにヒーナンがインゴールの外でボールを保持している。パナソニックからすれば「得をした」判定ではあるが、田中は「帝京の子のいいプレーが、ただのミスキックになってしまった。僕らもありえないと思います」。さらに、「学生に対して失礼」と言い切った。これ以外にも密集でのオフサイドの判定など、終始、ミスジャッジはあったと主張した。

 場内の雰囲気についても、「今日の盛り上がりって東芝戦に比べて何も盛り上がってなかった」と悲観した。客席からは大きな歓声が上がってはいた。ただ、「パナ(ソニック)がトライを取ればパナの方(応援)が興奮して。帝京が攻めてたらワーってわいて、ミスしたら『あぁ…』ってなる(ため息が出る)だけの話なので、やっていても楽しくもないと思います。人それぞれとは思いますけど」と、それぞれの応援団だけが盛り上がっただけと感じ取った。

 さらに、この日と同じ秩父宮ラグビー場で行われたトップリーグ決勝・東芝戦には超満員の2万4577人が詰めかけ、田中自身が「夢に描いていた光景」と涙したのとは違い、両サイドのスタンドは観客がまばら。1万2321人が来たとはいえ、日本一を決める試合としては物足りなかった。

 今季はW杯に加え、サンウルブズのスーパーラグビー参加への動きなどさまざまな事案があった。そのことには田中も理解しつつ、「準備が遅いのが日本のラグビーの問題と思います。仕方ないといえばそうですけど、そう言ってしまったら終わりなので」と指摘。日程上の都合とはいえ、日本選手権が大学生と社会人の優勝チーム同士の一発勝負となったことにも、「(帝京大が)トップを取ったチーム(パナソニック)とやって、こういう点差で学生生活が終わってしまうというのは、しんどいというか。去年みたいに下から上がってきて、(帝京大が)NECさんに勝ったとなったら、『よっしゃ勝った』と多分、良い思い出になると思うんですけど」と意見を述べた。

 今季のトップリーグ開幕戦の際にも、チケットが完売したにもかかわらず、秩父宮ラグビー場のスタンドに多くの空席が生じたことに対して、「ラグビーが負けた日」と痛烈な批判をしたが、こうした発言はしたくてしているわけではない。「(ラグビー界が)変わらないと2019年、失敗する」と日本開催のW杯へ必要なことと感じている。取材の最後に、「文句ばっかりですいません」と申し訳なさそうにつぶやいた姿が印象的だった。

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