身上半減の刑罰すら「炎上マーケティング」に!ていは「儒学バトル」で大活躍【べらぼう】

横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。10月12日の第39回「白河の清きに住みかね身上半減」では、蔦屋の出した山東京伝の本が絶版となった上に、御公儀の裁きを受けることに。おていさんの教養が最大限に生かされた熱い展開に、SNSは沸き返った。

■ 刃向かう蔦重に厳罰の危機…第39回あらすじ北尾政演こと山東京伝(古川雄大)が蔦屋から出した洒落本3冊が「好色本」と見なされて絶版となり、重三郎と政演は奉行所で詮議されることになった。重三郎は松平定信(井上祐貴)が見分することになり、重三郎はこれらは「遊びは身を滅ぼす」という教訓の本であり、定信の評判を上げるためだと言い放った。関係者の厳罰が危ぶまれるなか、重三郎の妻・てい(橋本愛)は幕府の儒官・柴野栗山(嶋田久作)と対面する。

朱子学の教えと厳罰は矛盾するものであり、重三郎は女郎を助けるために今回の本を作ったと訴えたていのおかげで、重三郎は財産を半分没収される「身上半減」、政演は手鎖50日の処分で済んだ。後日、店の畳も暖簾もきっちり半分ずつ持っていかれた蔦屋の様子に、大田南畝(桐谷健太)らが大笑い。重三郎は「身上半減の店は、日の本で蔦屋だけ!」と逆に店を売り込み、残った本をさばいていくのだった。

■ 元祖・袋とじ!?裁きでは地雷ワード連発蔦屋重三郎の最大のピンチと言われる、山東京伝『仕懸文庫』などの3冊の本の絶版。「教訓読本」と書かれた袋に入ってるけど、その中身は吉原での遊び方のハウツーや、遊女と客のやり取りなど。言ってみれば、カバーは参考書だけど中身はエロ本みたいな感じなのだけど、雑誌によくある「袋とじ」を想像した人も多かったよう。確かに普通の本のなかに違法なものを、わかる人にだけわかるよう潜ませる方法は、これが元祖と言えるかもしれない。

現代の出版界では普通となっている手法やマーケティングが、実は蔦屋重三郎の発明だった! という驚きは『べらぼう』が始まってからたびたび経験しているけど、久々の重三郎の先見の明に、SNSも「袋綴じも蔦重が考えたってコト?」「ほんとエポックメイキング! ありがとうございます」「『袋閉じなら検閲で見られないからそっちにえっちなものを入れます』もうエロ週刊誌の元祖なんですよ、それは」と、感心しつつも失笑するような声が。

しかし「どうせ奉行所は真面目にチェックなんかしないでしょ」と重三郎が高をくくってたのに反して、絶版&定信が直接取り調べるというまさかの展開に。ここぞとばかりに、定信を持ち上げる振りをして「お前の政、きれいごと過ぎてやってらんねえ」という痛烈なうがちを込めた言葉で定信を罵倒する重三郎には、SNSで「やっちまったなあ」と「蔦重ならやるよね」という、両方の思いがこもった声が。

「嘘やん直接来るの。怖いよこの黄表紙オタク」「大物来ちゃった! 向こうからしたら推しに会えたのに裁判所で裁く側になるたぁ」「この際だから言いたいこと言ってしまえ! となってないか蔦重・・・!」「蔦重大人しくしてて。ハラハラする」「うわあ、地雷ワードでお裁きラップバトル」「ここまでされてなお壊れたスピーカーじみて減らず口を叩き続けるの、マジですげえよ蔦重恐れ入ったよ」などのコメントが見受けられた。

■ ていが動く…学者を相手に「儒学バトル」老中にこんだけ言いたいこと言っちゃったんだから、もう打首にされたっておかしくない・・・となったところで、自分しか重三郎を救える人がいないと言われたおていちゃん。松平定信が勧める朱子学は、厳しい刑罰を良しとしていないということを盾にして、重三郎減刑のために立ち上がった!

女性ながら四書五経に通じているというキャラ付けが、当初は変わり者扱いされていたけれど、まさかそれが大きな武器になる日が来るとは。柴野栗山という当代一の学者と堂々と渡り合う姿には、SNSで大きな感嘆と感激の声が。

「『定信の振る舞いを朱子学の矛盾で攻めればなんとか』おていさんなら、出来る!」「おていさんには多くの本を読んで学んだ先人の知恵という武器がある」「おていさん、論語でバトルかっこいいな!」などの言葉があった一方、視聴者は付き添いの長谷川平蔵(中村隼人)の目が泳ぎ気味だったのを見逃さず「長谷川様・・・多分、ちんぷんかんぷんの可能性!」「『ふーん、なるほどそういうことね(何も分かってない)』みたいな顔が耐えられない」「ここでもいい仕事(?)してる長谷川様」というツッコミも上がっていた。

おていさんの儒学バトルの甲斐あって、見事に最悪の判決は免れた重三郎。それでも自分の理屈をお奉行様に通そうとする重三郎を、思わず平手打ちする姿に「おていさんいなかったら死んでたぞ蔦重」「嫁(この期に及んで何を言ってんだ)の目」「そりゃ怒りのおていさんタコ殴りにするわな」「おお、この瞬間におていさんが言う『べらぼう!』は沁みるなあ」「お奉行様、ビンタされた蔦重を心配そうに見て無かった?」と、最後までおていさんを応援する声が続いた。

■ 「身上半減」を逆手に炎上マーケティングこうして「身上半減」に処せられた重三郎だけど、実はこの処罰が実際にどういうものだったのかというのは、それまで持っていた財産を没収されたとも、今後の売上の半分を召し上げられたとも言われており、実はよくわかってないそうだ。

そこで『べらぼう』が取った説は、店にあるあらゆるアイテムを本当に「半分」に切り取って行くという方法! なんだか落語のネタみたいで、大田南畝や周囲の人たちも、これには笑わざるを得なかっただろう。

しかしここで、重三郎の大きな強み「ピンチをチャンスにする」が発動された! 史上初めて執行された刑罰を、みんなが笑っているのを見て「身上半減された日本で唯一のお店! 没収を免れた書物は縁起物!」というセールストークを展開したのだ。

南畝は重三郎を「お前さんは『そう来たか』がお似合い」と評していたが、今回はまさに南畝先生と一緒に「そう来たか!」と言いたくなる展開だった。

これにはSNSも「おお、本当に半減だ。これは視覚的に屈辱だな」「この面白い状態をウリにしようと??」「マイナスイメージを宣言に使うの強い」「今でいうと、炎上マーケティングに近いな! いや、ずっとやってる閉店セールに近いか」「身上半減がブランド化してるw」「大概の人なら顔を真っ赤にして屈辱を感じるだろうに、流石この物語の主人公は転んでもただでは起きませんわ」「重い罪ではなく面白さに変えられる罪、か・・・」と、重三郎のメンタルの強さに感心する声が集まった。

■ 大河ドラマで「鬼平犯科帳」SNSは歓声とはいえ今回の影の功労者は、ていと栗山を引き合わせてくれた長谷川平蔵様。そして最後には「葵小僧」という実在の強盗との捕物で「火付盗賊改方、長谷川平蔵である!」という、某時代劇でおなじみの名乗りを!

これにはSNSも「きゃーーー鬼平犯科帳!! 鬼平犯科帳だああああああ!!!!」「鬼平の名乗りを聞けた!!!嬉しい!!!」「俺たちのカモ平が鬼平になった瞬間」「超高速鬼平犯科帳だった」という歓声があがっていた。

最後の鬼平の捕物は、まさに時代劇ファンに向けた大サービスと言った感じだったけど、鬼平VS妖盗葵小僧以外にも、蔦重VS定信とか、おていVS栗山とか、手に汗握るバトルな展開が多い回だった。

一説には蔦屋は数億レベルの財産を没収されたと言われており、お先真っ暗な負け犬状態で終わってもおかしくなかったけど、町の人から「笑われた」のを、能動的に「笑わせる」に変えてエンタメ本屋みたいにしてしまうとは、さすが根っからの商売上手の蔦重である。そしてここから、どうあざやかに一発逆転していくか、まずはその鍵を握る喜多川歌麿(染谷将太)と、一刻も早く仲直りをしていただきたいものだ。

大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。10月19日の第40回「尽きせぬは欲の泉」では、重三郎があるアイディアの実現のために歌麿に会いに行くところが描かれるとともに、のちの曲亭馬琴(津田健次郎)と葛飾北斎(くっきー!)が初登場を果たす。

文/吉永美和子

(Lmaga.jp)

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