「M-1」悲願の初決勝へ…カベポスター、独特な空気感保つ「フラット」な出囃子とは
お笑い芸人が舞台へ上がる際に流れる音楽「出囃子」。芸人にとっては自分たちの登場を知らしめる重要なテーマ曲、また舞台に立つエンジンであり、それぞれに思い入れがあるはず・・・。
そこで「よしもと漫才劇場」(大阪市中央区:以下、マンゲキ)所属芸人から、曲に込められた想いや経緯などを深掘りする連載がスタート。マンゲキメンバーの兄貴的存在・スマイルの瀬戸をインタビュアーに迎え、7回目は2022年『ytv漫才新人賞決定戦』『ABCお笑いグランプリ』と賞レース2冠、『M-1グランプリ2022』では初のファイナリスト入りと、快進撃が続くカベポスター(永見大吾、浜田順平)に迫ります。
「キャラ作りが難しくて、いつもの2人の感じを」(永見)瀬戸:今回はカベポスターさんでございます。すみませんね、こんな『M-1』前の大事な時期に・・・瀬戸と喋ってる場合かってね。
永見:いやいやいや。
浜田:とんでもないですし、敬語もやめてくださいよ!(笑)
瀬戸:1番仕上げなあかん時期にね、ありがとうございます。カベポスターはもう何年目になるん? 「マンゲキ」ではぼちぼちお兄さん的存在なんちゃう?
浜田:9年目ですけど、ほんまに中間くらいですかね。僕らは36期で、それ以下の「翔(かける)メンバー」っていう若手のチームに所属してるんですけど、下は44期の子とかもいるんで、ちょい兄さん感は出させていただいてます。
瀬戸:そんな感じよね。カベポスターのスタイルってさ、どう言えばいいんやろうな? ほんまに独特というか。ゆったりとしてるけどたたみ込むときもあるし、パッと見マイクから動かんから正統派かと思いきや正統派とも言えない。
永見:結構いろんなこと言われますね。賞レースとか出させていただくときは、不思議な感じって言われるときもあるし、正統派みたいなキャッチフレーズ付けられるときもありますし。
瀬戸:「カベポスター」というジャンルになりすぎてて、みんな分からんねんやろな(笑)。生身の漫才ももちろん見たいけど、カベポスターはラジオでずっと聞いていたい、ゆったりとした・・・この雰囲気は意識してなのか、いつもの永見自体がそんな感じやもんな。
永見:あんまり無理しないようにと言いますか、キャラ作るのがお互い難しそうだったんで、いつもの2人の感じでネタを書こうって気持ちはありますね。この2人だから成立するっていう。
浜田:でも最初はもっと声も小さかったですし、少しずつどうやったら聞いてもらえるかを考えてやってきた感じですかね。劇場メンバーに入れず跳ね返されてたんで、コント漫才とか動きのあるネタもやったりもしていましたよ。
永見:別に悪くはなかったんですけど、普通に喋っているのに近いネタに戻したら『ABCお笑いグランプリ』で決勝に残れて、これで認めてもらえたっていうので、今はそれでやってる感じですね。もしかしたら、コント漫才とか色々なネタを書いた経験もあって、より良い台本ができるようになったのかもしれないです。
瀬戸:無理をせずに、自分らのできることを表現しだすようになったら、ちょっと周りも評価し始めてくれた。9年やってきて、2人は独特な空気感もあるけど・・・お互いを見てどういう人やなって思ってる?
永見:浜田は正義感が強いっていうのはありますね。多分、曖昧なことがなくて、ちゃんと自分のルールがあるんです。例えば女性のスカートのなかを盗撮したとしても、全部ちゃんと理由があるんです。「撮りましたよね?」って詰められても、ちゃんと「いや、これはこうだから撮りました!」って言えるみたいな。
浜田:ちょちょ、例えどうにかならんの? でもこだわりがあるっていうのはありますね。変やなって思われる行動もしていると思いますけど、聞いてくれたらちゃんと理由は言えそうな気はします。
永見:こだわりっていうよりかは、ちゃんと分析をしてこれが1番だ、みたいなものを持ってる印象ですね。
瀬戸:でもさ、結構しっかりしてるイメージやけど、最近「マンゲキ」ではイジられ始めてない?
永見:そうですね、こんなに理由もってる人あんまりいないんで(笑)。
瀬戸:そっちで?(笑) イジられるって本当アホで天然なやつか、賢すぎて「なんやねんこいつ!」って鬱陶しいやつかやと思うけど。
浜田:今、瀬戸さんが言った全要素持ってるかもしれないです(笑)。僕的には一生懸命ツッコむからって分析してるんですけど。
瀬戸:カベポスターの世界観があるからパッと見じゃそんな感じ伝わらへんけど、めちゃくちゃ人間味あるやん(笑)。永見は?
浜田:永見は本当「お笑い」にこだわりがあって、自分のやりたい言葉とかも大事にしてますし。僕はどっちかって言ったらウケたらいいかなっていう感じで、言葉選びするんですけど、永見は自分のおもしろさを出したいっていう・・・ことお笑いに関しては、めちゃくちゃ頑固っすね。
瀬戸:元々ハガキ職人っていうのもあるからかな。でも良いことやもんね、見てる側にもそれは伝わってるやろうしね。
「『かっこつけない』が曲決めの絶対条件で」(浜田)瀬戸:で、出囃子ですよ。自分の行動には芯がある浜田に、永見も「お笑い」へのオタク気質・・・今の話しの流れからすると、かなりこだわってるんちゃう? 出囃子はスーパーカーさんの『cream soda』(1997年)か。
永見:これが正直そこまでで・・・。どうする?ってなったときにお互い好きな曲を出し合ったんですけど、お互い好きが強すぎて決めれなくて、折衷案的な。
瀬戸:え! 意外やわぁ!漫才に響くからめちゃくちゃこだわるってなると思ってた。
浜田:僕は「かっこつけたくない」っていうのが絶対条件にあって。センスが出過ぎているのも嫌だったので、ネタに影響がなくて自分たちにも合ってて、ほど良い曲。
瀬戸:でも確かに。めっちゃ良い曲やし、ギター音から始まるところとかも素敵やけど、良い意味でガツンっていう特徴がないかもしれへん。いきすぎてもなく、おとなしくもなく・・・正直どのコンビでも出やすいかもなあ。
浜田:そうなんですよ! 自然な感じで。
永見:もちろん良い気分で出られてますよ。ちょうどお互い好きな曲っていうのがあんまりなくて。
瀬戸:いやもう、この2回目に出たツートライブの回見て。「このタイミングで、ここでスイッチ入って、ここが・・・」って、曲に対する熱がもうエグかったから。
浜田:(笑)。片や僕らは。
瀬戸:ちなみに話し合ってこの曲になったってことやけど、お互いの候補曲は何やったん?
浜田:僕は桑田佳祐さんの『祭りのあと』だったんですけど、ちょっと渋すぎるなぁって。この間、本当にたまたまイベントでその曲で出ることがあったんですけど、ちょっと悲哀がありすぎましたね。
永見:僕は「the pillows」とか・・・。あと、「ルースターズ」っていうバンドの『SITTING ON THE FENCE』って曲の歌詞が好きで候補には出しましたけど、声が結構どぎつくて僕らに合ってないなと。
浜田:僕も「the pillows」好きなんですけど、PVとかを見て、ちょっとかっこつけてる感じが出るかなっていうのがあって。曲とか人もめちゃくちゃ好きなんですけど、出囃子としてはちょっと違う、歌詞にメッセージ性がありすぎるように感じて。
瀬戸:出囃子で空気を変える、とかはしたくなかったんかもね。ある意味本当にフラットにして舞台に出ていってるんか。
永見:そうかもしれないです。あと、『cream soda』の入りの歌詞が何でもないことというか。「昨日また僕が白い目で見た夢は~」って、どの単語もひっかからないですし。
浜田:今改めて考えると、永見の一人称が僕なんで、それも良いですね。追加しておいてください(笑)。
瀬戸:あとね、今回初めて言いますけど、インタビュー前に簡単なアンケートを出させていただいてるんです。曲を決めた想いについて、永見の答えが「将来結婚して子どもができたときに炭酸を飲めるような子になってほしい」・・・かなりボケてらっしゃいますよね?
浜田:クリームソーダを? いや、嫌いな子もおるけど。ええやん別に。
永見:いや、結構変わってくると思いますよ。僕小さいとき炭酸ちょっと苦手だったんですよ。なんですけど、周りのみんながコーラに手をだすようになって、ちょっとなんか差を感じたんですよね。
瀬戸:アンケートで濃すぎるのよ。永見ボケの世界観がすぎて。
永見:いやいや、ほんまに思ってるんで。その・・・今の『ボケてらっしゃる』っていう言葉が、ほんまにイヤでしたね・・・。
瀬戸:ハハハ!(笑) じゃあ申し訳ないです。ボケてらっしゃらない、芯を持って回答してくれてたのに、失礼しました!
浜田:ちょっと瀬戸さん! 大御所やったらえらいことになってますよ!
瀬戸:でもスッキリしました。この曲が流れて、ほんまにフラットな状態で出て行くからこそ、カベポスターはツカミも早いやんか。ポーンと入ってくるというか。
浜田:なるほど・・・それめっちゃうれしいですね。それ、良ければ僕の意見として書いといてもらえませんか?(笑)
永見:もし良かったら、さっきの「炭酸飲めるような子に」っていうのも瀬戸さんからの意見としてあげますよ。
瀬戸:いや、いらんいらん!急に「もしかして炭酸飲めるような子にするため~?」って? インタビュアーがボケ始めるって1番痛いから。
浜田:実際、今クリームソーダ運んでこられそうな格好してますしね(笑)。
「永見は『お笑い』以外、ほんまに無頓着」(浜田)瀬戸:でもやっぱネタというか、「お笑い」に対する永見のこだわりはすごいんやな。
浜田:その代わり、服装とか見た目はマジで無頓着ですよ。蓋開けたら、人としての生活に対する考え方とか、もう一切ない。
瀬戸:そうやねんな! なんか、テレビで寝起きドッキリ企画出てたときも、部屋とかめっちゃ汚かったやん。綺麗好きでやってんのかなと思ったら、ほんまにお笑い以外のことはだらしないというか。
永見:僕もあの家嫌なんです。ガサツやなって自分でも思いますね。
浜田:いや、お前が嫌にしてんねん(笑)。「お笑い」に関しても、サボれるときはサボりたいとも思うんですけど。
永見:今も本当に「ポケモン」が欲しいんですけど、『M-1』があるので。買ったら絶対やっちゃうんで・・・そういう気持ちはもう常に持ってます。5年前とかやったら、絶対買ってましたね。
浜田:今はほんまに燃えてくれています。
瀬戸:もう目の前にはやるべきことがあるから、そこに集中して。これって決めたことに対しての執着心というか、そこに向き合う姿勢がすごいよね。本当、漫才があって良かったなぁ。
永見:確かに。なんにも出来なかったです。
「『出囃子』ってちょっとレベルが高い単語」(永見)瀬戸:では最後に。芸人とって出囃子とはっていうのを聞かせていただいているんですよ。
浜田:やっぱりもう、流れた瞬間に間違いなくスイッチが入りますね。ネタ合わせとかだべってたりしても、曲を聞くと緊張感漂いますし、ほんまあってくれてうれしいですね。「スイッチ」です。
瀬戸:確かにそれはそうね。永見は?
永見:僕は「フェルト布」ですね。・・・ありがとうございました!
瀬戸:いや、ちょっと待ってください。ここで終わると読まれてる方が「?」ってなってしまうので。ここでもボケてらっしゃるから。
永見:また言うてるやん・・・。(浜田に耳打ちする)
浜田:すいません、今から(「マンゲキ」MCでお馴染み)令和喜多みな実の河野さんを呼んでいただいても良いですか!?
瀬戸:いや、インタビュアーをチェンジとかそういうのはないんですよ!(笑)やめてください、何か癇に障ったのであれば謝ります。
永見:「ボケてらっしゃる」っていうのがちょっと・・・。「フェルト布」分かんないですか?
瀬戸:申し訳ない、ボケやと思ってしまって。理由だけ聞いても良いですか?
永見:僕「出囃子」って言葉を芸人になってから知ったというか、単語的に全員が知っているものではなくて、レベルがちょっと高い言葉かなと思ったんすよ。ちょうど同じくらいのレベルで考えたときに「フェルト布」かなと思いまして。・・・間違ってる雰囲気出されてる?
浜田:すいません、立ち会いの社員さん、カメラマンさん含めメンバー変えてもらえますか!?
瀬戸:やめてください!(笑) エルマガはこのチームで動いていますので。「フェルト布」ね、素晴らしい! 同じ敷居くらいのワードってことですね、そこに気付けなかった僕がバカでした。今回は勉強させていただきました。ありがとうございました!
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カベポスターが初の決勝進出を決めた『M-1グランプリ2022』は12月18日、ABCテレビ・テレビ朝日系列24局で放送される。
同月31日にはカベポスターはじめ「よしもと漫才劇場」所属芸人らが参加する『マンゲキ大晦日大祭典2022』が、「よしもと漫才劇場」「森ノ宮よしもと漫才劇場」(ともに大阪市中央区)の2会場にて開催。チケットはFANYチケットにて、12月3日・朝10時より一般発売を開始する(オンラインチケットあり)。
取材/瀬戸洋祐(スマイル)写真/わたなべよしこ
(Lmaga.jp)
