川島小鳥 女優・尾野真千子を奈良・吉野の実家で撮りおろした写真展

現在最も人気のある写真家のひとり、川島小鳥(1980~)。彼の新作個展『川島小鳥写真展』が、「入江泰吉記念奈良市写真美術館」(奈良県奈良市)で、8月26日までおこなわれています。

本展は最初の段階では、川島の過去作品からピックアップした個展として計画されていました。しかし、美術館からオファーを受けた川島は、奈良出身の女優・尾野真千子を起用した撮り下ろしの新作展を希望。今年の4月から5月にかけて、台湾と奈良・吉野にある尾野の実家で撮影を敢行し、出来立てホヤホヤの新作個展として実現したのです。

撮影は川島と尾野の2人だけでおこなわれ、関係者は一切同行しませんでした。また、作品は一部を除いてモノクロで、カメラはデジタルを使用しています。川島といえばカラーのフィルム写真、それも水彩絵具のような瑞々しい色彩感覚が持ち味なので、この試みは彼にとっては異例です。ひとりの写真家が新たな領域に足を踏み入れた、記念すべき個展といえるでしょう。

作品数は199点で、台湾から吉野へとほぼ時系列に並んでいます。最初はお互いに手探りだったのが、徐々に気持ちがほぐれて、尾野の表情が如実に変化していきます。なかにはすっぴんと思しきアップや、煙草をくわえた作品も。「あらー、こんなのよくOK出したねえ」と驚きを禁じ得ませんでした。しかし尾野真千子と言えば名うての演技派女優です。プライベートに見せかけて実はしっかり演じているのかもしれません。

ところが後半の実家での作品を見て、筆者の推理は間違いだったと気付かされました。両親や地元の旧友たちと寛ぐ姿が、まさに素の尾野真千子だったからです。台湾での作品もプライベート感ありありでしたが、吉野の作品はそれ以上。作品を見ているうちに、まるで自分もその場を共有しているかのような感覚に包まれました。

本展では、映画やテレビとは違う、もうひとりの尾野真千子と出会えます。どの作品も魅力的で、こんなに素敵に撮ってもらえたらさぞやうれしかっただろうと思いました。そして、被写体から最高の一瞬を引き出す川島小鳥の手腕には、「敬服」の一言しかありません。料金は一般500円。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

(Lmaga.jp)

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