済美の怪物安楽3連投772球で力尽く

 「センバツ・決勝、浦和学院17‐1済美」(3日、甲子園)

 MAX152キロを誇る済美のエース、安楽智大投手(2年)が772球で力尽きた。9年ぶり2度目の優勝を狙った済美は、浦和学院に1‐17で大敗。3連投となった安楽は6回9失点で、今大会5戦目にして初めて途中交代した。浦和学院は創部35年目で、春夏通じて初優勝。18安打の猛攻で全員得点を挙げ、今大会3度目の2桁得点で圧勝した。埼玉県勢の優勝は1968年の大宮工以来、45年ぶり2度目。

 怪物が泣いた。悔しさを抑え切れなかった。続投を志願した済美・安楽に、上甲正典監督(65)がやさしく告げた。「体を大事にしよう。もう無理するな」。6回12安打9失点。限界だった。降板を決意した2年生エースの目に涙があふれた。

 初めて経験する3日連続の先発マウンド。準決勝まで663球を投げ、疲労はピークだった。「朝起きたときからつらかった」。体が重く、球が走らない。この日の最速は142キロ。懸命に腕を振っても130キロに届かないこともあった。

 悪夢の五回。先頭打者から3連打を許すと、3番・山根から5連打を浴びた。「人生で初めて」の1イニング7失点。意地で六回のマウンドにも上がったが、立て直すだけの余力はなかった。

 「ギアを上げようと思っても上がらなかった。完全に力不足です」

 頂点は逃した。だが、四国の剛腕は確かに今大会の主役だった。初戦の広陵戦で152キロをマーク。バックネット裏のスカウト陣の目をくぎ付けにした。打撃でも勝負強さを披露。チームをグイグイ引っ張る姿は、真の「エースで4番」だった。

 昨秋の新チーム結成時、背番号「1」をもらった安楽は2つの誓いを立てた。1つは「卒業までに160キロ到達」。福井優也(広島)らを育てた上甲監督との二人三脚で、これからもスピードを追い求めていく。

 もう1つの誓いは「監督を甲子園に4回連れて行くこと」。1回目の聖地で準優勝の結果を残し、その目標には少し修正が加わった。「あと3回チャンスがある。甲子園で監督を胴上げしたい」。強烈なインパクトを残した772球。涙が乾いた怪物の目は、熱い夏のマウンドを見据えていた。

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